タイで外国人による名義貸し事業に対する取り締まりが強化され、高リスク部門での新規事業登録が大幅に減少しています。タイ商務省事業開発局(DBD)によると、新たな厳格化措置により、高リスク事業の登録は60%も減少したと報じられています。Bangkok Postは、これにより不透明な事業運営が抑制され、経済の透明性向上に寄与する見込みだと伝えています。
タイ:高リスク事業登録が急減、マネーロンダリング対策強化
タイ商務省事業開発局(DBD)は、外国人による名義貸し事業に対する規制強化策が功を奏し、いわゆる「高リスク」と見なされる事業分野での新規登録数が大幅に減少していると発表しました。DBDのプーンポン・ナイヤナパコーン局長によると、4月から導入されたこの措置は、外国人パートナーと共同で事業を運営するタイ人株主に対し、財務情報の提出を義務付けるもので、これにより高リスク部門の登録は約60%減少しました。特に、導入後最初の23日間で、高リスク事業の新規登録は前年比で75%減の約175社にとどまり、不正な名義貸しを目的とした登録はわずか10件に抑えられたと報告されています。
この背景には、マネーロンダリング(資金洗浄)や租税回避に利用される「所有・支配構造が不透明な法人等」への国際的な懸念があります。アジア経済研究所の分析でも、タイにおける構造的な経済課題や階層間対立が、こうした不正行為の温床となり得ることが指摘されています。
名義貸し事業の実態と全国的な取り締まり
DBDは、デジタルプラットフォーム「DBD Biz Regist」のチェックを通じて、一部のユーザーがログイン情報を他者に貸与したり、申請者が対面で確認されなかったりするケースを発見しました。プーンポン局長は、これまで観光関連の10県で少なくとも7,500件もの不審な登録を摘発し、4,300人以上の外国人が無許可の事業運営や禁止されている職業に従事していたと明らかにしました。名義貸しネットワークは、不動産、物流、さらにはココナッツ流通といった広範な分野で確認されています。
タイ政府は、全国的な名義貸し事業の取り締まりを強化するため、21の政府機関と覚書(MoU)を締結する準備を進めています。この覚書により、疑わしい事業者の金融取引や資産に関する調査が可能となり、より強力な監視体制が構築される見込みです。アヌティン・チャーンウィーラクーン首相がこの締結式を主宰する予定です。
さらにDBDは、タイ国民に対し、名義貸しが長期的に経済にもたらす損害を認識させるための啓発キャンペーンも実施します。外国人から受け取る手数料が、その影響に見合うものではないことを周知徹底する方針です。
国民生活を支援する「タイ・チュアイ・タイ」スキーム
名義貸し事業の取り締まりと並行して、DBDは国民生活を支援する新たなショッピングスキーム「タイ・チュアイ・タイ(Thai Chuay Thai)」を全国878の郡役所で展開すると発表しました。このスキームは、参加するスーパーマーケットや現代的な店舗から提供される少なくとも3,000品目の生活必需品を対象とし、マーケティングコストの削減により最大58%の割引を提供するものです。
プーンポン局長によると、この市場は今月毎週金曜日に開催され、公共のアクセスを改善します。スパーチャイ・スタムパン商業大臣は以前、タイポストと協力し、8,000以上の地域に商品を配送する計画があることを明かしています。また、地方の市場や移動販売車「ロット・プム・プアン」を通じて地域産品や農産物を流通させ、遠隔地でのアクセス向上も目指しています。中小企業(SMEs)の製品については、ThailandPost Mart、Nexgen、TikTok Shop、Shopee、Line Martなどのオンラインプラットフォームで手数料なしで販売できるよう支援する方針です。
タイ政府による外国人名義貸し事業への厳格な取り締まりは、経済の透明性向上とマネーロンダリング対策への強い意志を示すものです。背景には、過去に所有・支配構造が不透明な法人等がマネーロンダリングや租税回避に利用されてきたという国際的な課題があり、2013年のG8サミットでこの問題が提起されて以来、タイも犯罪収益移転防止法の改正(2016年)などで対応を強化してきました。今回の措置は、タイ国内の構造的な経済課題や、外国人による不法な経済活動が蔓延しているという認識に基づいていると考えられます。
在住日本人や日系企業にとっては、今回の規制強化は事業運営におけるコンプライアンスの重要性を改めて浮き彫りにします。合法的なビジネスであっても、タイ人パートナーとの協業においては、より一層の透明性と厳格な財務管理が求められるでしょう。一方で、「タイ・チュアイ・タイ」のような生活支援策は、経済の健全化と国民生活の安定を両立させようとする政府の姿勢を示しており、タイ経済全体の活性化にも繋がる可能性がありますが、正規の外国企業が不当な監視の対象とならないよう、明確なガイドラインが求められます。


