バンコクを含むタイ全土で、政府が家庭向け電気料金の引き下げと屋上ソーラー発電の導入促進策を承認しました。エネルギー大臣のエカナート・プロムパン氏によると、これにより多くの家庭で電気代が軽減され、再生可能エネルギーの普及が加速する見込みです。Khaosod Englishがこの重要な政策を報じています。
タイ政府、電気料金削減と太陽光発電推進の背景
タイの国家エネルギー政策評議会は、家計の電気料金負担を軽減し、屋上ソーラー発電の普及を促進するための2つの主要な措置を承認しました。近年、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する国際エネルギー市場の混乱や価格高騰、国内における電力・ガスの需給逼迫の懸念が続いており、タイ政府はエネルギーの安定供給と国民生活の支援を最優先課題としています。今回の政策は、こうした背景を踏まえ、国民の生活コスト(物価)を抑えつつ、持続可能なエネルギー源への移行を加速させる狙いがあります。
家庭向け屋上ソーラー発電の拡大と売電制度
政府は、住宅用ソーラーパネルの設置支援を大幅に拡大します。これにより、各家庭が自ら電力を生成し、余剰電力を電力網に売却できるようになります。計画では、内閣決議に基づいて設置手続きが合理化され、電力供給事業者がワンストップサービスを提供します。家庭が発電した余剰電力は、1ユニットあたり2.20バーツ(約11円)で売電可能となり、2026年6月以降の販売開始が見込まれています。
さらに、政府の太陽光発電買い取り上限は、従来の90メガワットから500メガワットに大幅に増強されます。これは、脱炭素時代のレジリエントな電力供給実現に向けた重要な一歩であり、住宅の屋根を小規模な発電所として最大限活用することを目指しています。
新しい累進課金制度の導入
2つ目の措置として、住宅利用者のみを対象とした累進課金制の電気料金体系が導入されます。企業、商店、産業部門は今回の変更の対象外です。
エカナート大臣によると、月間200ユニットまでの電力消費の家庭は、1ユニットあたり3バーツ(約15円)未満の料金が適用されます。また、200ユニットから500ユニットを消費する家庭も、段階的な料金システムにより平均コストが引き下げられます。これにより、タイ全土の約2100万世帯、つまり90%以上の家庭が恩恵を受けると予想されており、特に月間電気料金が2,200バーツ(約11,000円)を下回る家庭に大きなメリットがあります。
在住者への影響と政府の支援策
この政策により、在住日本人を含む多くの家庭が電気料金の削減を実感できるでしょう。エカナート大臣は、月間200ユニット以下の使用量であれば約20%の料金削減、400ユニット以下の使用量であれば約10%の削減が見込まれると述べています。
太陽光発電の導入を支援するため、政府は財務省と連携し、分割払いによる融資制度を提供します。これにより、家庭は電気料金よりも低いコストで屋上ソーラーシステムを設置できるようになります。また、地方の許認可要件が撤廃され、屋上ソーラー発電の承認プロセスが簡素化されます。自家利用目的の設置は7日以内、売電目的の場合は30日以内の完了を目指すとのことです。
産業界の懸念に対する政府の見解
タイ工業連盟からは、今回の政策が産業界に新たな負担を課すのではないかとの懸念が表明されていました。しかし、エネルギー大臣は、改定された料金体系は住宅消費者のみに適用され、企業向けの既存料金には影響しないと明確に否定しました。産業大臣のワラウット・シルパアーチャ氏も、この措置が住宅物件にのみ適用され、産業利用者に新たな負担を課すものではないと重ねて強調しています。
今回のタイ政府による電気料金引き下げと屋上ソーラー発電推進策は、国際的なエネルギー価格高騰と国内の電力需給逼迫という構造的な課題への対応であり、中所得国の罠を回避し、持続的な経済成長を目指すタイの長期戦略の一環と見ることができます。化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーへの投資を加速させることで、エネルギーの安定供給再構築と脱炭素社会への移行を同時に実現しようとするものです。
この政策は、バンコクを含むタイに暮らす在住日本人にとって、直接的な電気料金の恩恵をもたらす可能性があり、生活コストの安定化に寄与するでしょう。また、タイ全体のエネルギーコスト構造の変化は、日系企業のサプライチェーンや事業運営コストに長期的に影響を与える可能性も秘めています。政府の支援策や手続き簡素化により、屋上ソーラー導入のハードルが下がることで、新たなビジネス機会が生まれる可能性も考えられます。


