22日のタイ株式市場(SET指数)は、米国によるイランとの停戦期間延長とムーディーズによるタイの格付け見通し上方修正を受け、上昇して推移しました。地政学的リスクの緩和と国内外の経済要因が投資家の信頼感を高めたと金融関係者が指摘しています。
タイ株式市場の動向:地政学的要因と格付け改善
22日のタイ株式市場(SET指数)は、InnovestX証券の予測通り、複数の好材料に支えられて上昇しました。特に、米国がイランとの停戦期間を無期限に延長すると発表したことは、短期的な地政学的緊張の緩和に繋がり、リスク資産市場に前向きな影響を与えました。イラン側はこれを「時間稼ぎ」と見なしているものの、今週パキスタンでの第2回交渉に参加する意向を示しており、対話の進展が期待されています。
また、国際的な格付け会社ムーディーズ・レーティングスが、タイの信用格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げ、格付け自体は「Baa1」に据え置いたことも大きな要因です。これにより、タイの信用リスクが軽減され、外国人投資家の信頼感が高まると見られています。外国人投資家による4日連続の売り越しが続いていた中で、この格付け改善は資金流出の抑制に寄与すると考えられています。ムーディーズは、この格付け改善が、5000億バーツ(約2兆5000億円)の借款法案の発行にもプラスに働く可能性を指摘しています。
国内経済政策が市場を後押し
国内要因も株式市場にプラスに作用しています。タイ政府は、2027年度予算案の承認スケジュールを予定通り進めると確認しました。具体的には、今年6月に閣議承認、7月に国会提出、9月に国王裁可という流れで、2026年10月の予算執行開始を目指します。これにより、予算執行の遅れがGDPに与える影響への懸念が和らぎ、特に建設関連企業(STECON、CKなど)や、下半期の消費刺激策・公共投資を期待する商業セクターに好影響をもたらすと予測されています。
さらに、物品税局は「新車買い替え促進策」を2026年5月中旬に財務大臣に提案する準備を進めています。この制度は、旧型車を下取りに出して新車を購入する際にインセンティブを与えるもので、ハイブリッド車や電気自動車(EV)も対象となる可能性があります。この政策は、自動車産業(STANLY、AHなど)や自動車ローン関連企業(TISCO、KKPなど)にとってポジティブなセンチメントとなると見込まれています。この種の政策は、消費者の購買意欲を刺激し、特に「中所得国の罠」からの脱却を目指すタイ経済にとって、内需拡大の重要なドライバーとなり得ます。
ホルムズ海峡通過とエネルギーセクターへの影響
米国とイランの停戦延長に加え、ホルムズ海峡の安全保障に関する進展も注目されました。タイの「チーム・タイランド」は、イランとオマーンとの調整により、タイ籍のタンカー3隻(PTTの200万バレル積載タンカー、BCPの70万バレル積載原油タンカー、SCCの5.5万トン積載ナフサタンカー)がホルムズ海峡を通過できたことを明らかにしました。これは、引き続きホルムズ海峡の封鎖措置が維持されている状況下で、エネルギーおよび石油化学セクターにプラスのセンチメントをもたらすでしょう。
ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要衝であり、その安定的な航行は国際経済秩序の維持に不可欠です。今回のタイ籍船舶の通過は、国際的な不確実性が増大する中で、サプライチェーンの安定性確保に向けたタイ政府の外交努力の成果と言えます。これにより、タイのエネルギー安全保障への懸念が一部緩和される可能性があります。
今回のタイ株式市場の上昇は、国際的な地政学的緊張緩和と、ムーディーズによる格付け見通しの上方修正という外部要因が大きく寄与しています。特に、世界経済の不確実性が高まる中で、タイのような新興国が安定的な経済運営と信用力を維持することは、外国人投資家からの信頼を得る上で極めて重要です。日本企業がタイへの投資や事業拡大を検討する際、このような国際的な評価は、投資判断における安心材料の一つとなるでしょう。
また、タイ政府が進める2027年度予算の確実な執行や、自動車買い替え促進策といった国内経済政策は、内需主導型の成長戦略を強化するものです。これは、日本貿易振興機構(ジェトロ)が指摘するように、経済構造改革と競争力向上を目指すタイにとって不可欠な取り組みであり、タイ在住の日本人や日系企業にとっては、消費市場の活性化や関連産業への恩恵が期待されます。特に「新しい資本主義」のグランドデザインが世界的に模索される中、タイ政府の政策は、持続的な成長に向けた具体的な一手を打っていると言えるでしょう。


