バンコク都は、住民の反対と建設費の高騰を理由に、都心部の道路計画83路線を中止する方針を固めました。これにより、バンコクの都市計画が大きく見直されることになります。この決定は、The Thaigerの報道で明らかになりました。
都心部の道路計画83路線が中止に
バンコク都都市計画開発局の関係者によると、2026年4月9日に開催されたバンコク都県都市計画委員会の会議で、新総合都市計画案(第4次改訂版)が承認されました。しかし、都は13項目にわたる修正指示を受け、その中には交通・輸送プロジェクト計画の調整が含まれています。
この調整により、バンコク都は当初計画されていた150路線以上の新規道路拡張・建設のうち、83路線の計画を中止することになりました。中止の主な理由は、住民への影響が大きく、実際に建設が進まない可能性が高いと判断されたためです。
中止される路線のほとんどは、パヤタイ区、ワッタナー区、ディンデーン区といった都心部に集中しており、主に幅12メートルまたは16メートルの既存道路の拡張計画でした。一方で、バンボーン区やバンクンティアン区などの郊外の一部路線は維持されます。新規建設が完全に中止された例としては、カセート・ナワミン通りからセーリータイ通りやラームカムヘーン通りなどを経由してバンナー・トラート通りへ接続するチャワー2号線などがあり、これも住民の強い反対を受けての決定でした。
トンブリー交通網改善へ、新道路「チョー1号線」「ゴー21号線」推進
一方で、バンコク都は必要不可欠と判断された新道路の建設は継続します。具体的には、ペチャカセム通りとスクサワット通りを結ぶ「チョー1号線」(旧チョー4号線)と、チョー1号線から南部環状道路(カンチャナーピセーク通り)へ接続する「ゴー21号線」(旧ゴー25号線)です。これらの路線は総延長21.9キロメートルに及びます。
このプロジェクトの目的は、トンブリー側の交通渋滞、特にペチャカセム通りやラマ2世通りの混雑を緩和することです。近年、BTSブルーラインやレッドラインといった鉄道網の開通により、トンブリー側の都市開発が急速に進展しており、それに伴う交通需要の増加に対応するため、これらの新道路が重要な役割を果たすと期待されています。
チョー1号線は6車線で、ペチャカセム通りのプッタモントン・サイ1通り接続地点を起点に、スクサワット通りまで約17.20キロメートルを結びます。ゴー21号線は4車線で、チョー1号線に接続し、南部環状道路まで約4.70キロメートルを走行します。
高額な土地収用費と建設スケジュール
バンコク都公共事業局によると、チョー1号線とゴー21号線の土地収用は現在50%以上進捗しています。このプロジェクトは5つの段階に分けて建設が進められ、土地収用にかかる費用は約139億8500万バーツ(約699億円)という高額になります。
建設スケジュールとしては、第1期(スクサワット通りからプラチャウティット通りまでの約2キロメートル区間)は、土地収用が約97%完了しており、建設費5億4500万バーツ(約27億円)が2027年度に申請される予定です。第2期と第3期は2028年度に予算が申請される見込みです。しかし、第4期と第5期については、土地収用費が非常に高額であり、住民への影響も大きいため、プロジェクト全体の完成にはさらに時間を要すると見られています。
また、ペチャカセム通りからラマ2世通りに至る区間については、住民の反対があったため、バンコク都は現在、新たな形式の適合性を検討しており、建設を一時的に保留しています。しかし、すでに土地収用令が発令されていることから、最終的には建設が進められると予想されています。
バンコク東部の交通渋滞緩和策
バンコク都は、東部の交通問題解決にも引き続き取り組んでいます。ラッタナコシンソンポット通りからニミットマイ通りを結ぶ、4~8車線の新しい道路の建設を推進する計画です。
このプロジェクトの第1期として、テプラック通りと東部環状道路を結ぶ約5キロメートルの区間(建設費13億3000万バーツ=約66.5億円)の競売が近日中に開始され、2年での建設完了を目指します。第2期(東部環状道路からニミットマイ通りまでの約5キロメートル区間、8車線)は、第1期が完了次第、予算が割り当てられ建設が進められる予定です。
さらに、バンコク都はプラディパット通り(サパンデーン交差点からトゥートダムリ通りまで)の拡張も計画しています。現在の4車線から6車線への拡張は、現在建設中のギアッカイ橋(2027年から2028年完成予定)と連携し、チャオプラヤ川を挟んだ両岸の交通をより円滑にすることを目的としています。
タイ、特にバンコクのようなメガシティにおける都市開発では、住民の反対運動や高騰する土地収用費が常に課題として存在します。JICAや国土交通省の報告書でも指摘されているように、急速な都市化は交通渋滞や都市環境の悪化を招き、インフラ整備が急務である一方で、既存住民の生活や権利との衝突は避けられません。今回の都心部83路線の計画中止は、市民参加型の土地利用計画策定や土地収用プロセスの透明化が求められる中で、高額な補償や反対運動が計画の遅延・中止に繋がる典型的なケースと言えるでしょう。
今回の決定は、バンコクに在住する日本人や日系企業にとって、今後の交通利便性や不動産投資戦略に影響を与える可能性があります。都心部の道路拡張が中止されることで、既存の交通インフラへの依存度が高まり、特定のエリアでの渋滞が悪化する懸念があります。一方で、トンブリー側や東部で進められる新道路建設は、これらのエリアの発展を加速させ、新たな居住地やビジネスチャンスを生み出すかもしれません。特に、鉄道網の整備と連携した都市開発が進むことで、郊外へのアクセスが向上し、より広範囲での都市活動が可能になるため、不動産開発の観点からは、中止されたエリアでの再開発計画の方向転換、新道路沿線での土地価格上昇など、今後の動向を注視する必要があるでしょう。


