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パッタルン県が「低糖度エコシステム」で健康推進!病院から地域へ甘さ控えめ文化を拡大

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タイ南部パッタルン県が、住民の健康促進と慢性疾患予防のため「低糖度エコシステム」の構築に乗り出しました。歯科医不足や子どもの高い虫歯率といった課題に対応するため、病院を起点に地域全体で甘さ控えめな食文化を広げる画期的な取り組みを進めています。この動きは、地元メディアKhaosodが報じたもので、持続可能な健康社会を目指す同県の強い意志を示しています。

深刻な歯科医不足と子どもの虫歯問題

パッタルン県では、歯科医の不足が深刻な問題となっています。県内にはわずか82人の歯科医しかおらず、1つの病院が郡全体の住民を4〜5人の歯科医で診なければならない状況です。これは、タイ全国で慢性的な問題となっている医療従事者不足の一端を浮き彫りにしています。さらに、3歳児の虫歯率は約40%にも達しており、これは南部7県の平均(虫歯がない子ども65%)を大きく下回る数値で、国の目標値75%からは程遠い状況です。

タイでは、子どもの頃から甘い飲み物やスナックを口にする機会が多く、これが虫歯や将来的な非感染性疾患(NCDs)のリスクを高める要因となっています。歯科治療費も国が負担する部分があるものの、実際には病院側が2,000バーツ(約10,000円)以上の超過費用を負担することもあり、財政的な課題も抱えています。パッタルン県の公衆衛生局は、こうした状況を改善するため、口腔内の健康だけでなく、食環境全体を見直す必要性を強く認識しています。

パッタルン県「低糖度エコシステム」の挑戦

パッタルン県公衆衛生局は、タイの「甘いものを食べない子どもネットワーク」と協力し、砂糖摂取量を減らし、安全な食品を提供する「低糖度エコシステム」の構築を目指すプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトの主な目標は、あらゆる年齢層の人々が砂糖の摂取量を減らし、安全な食品を口にできる環境を整えることです。これまでに、県内の11の病院全てで「低糖度・安全食品」モデルを成功させ、NCDsのリスク低減に貢献しています。

プロジェクトでは、病院内での低糖度メニュー開発や、健康志向のカフェとの連携による「甘さ控えめ注文可能」な取り組み、さらには大学や職業訓練センターと協力して新規事業主への研修も行っています。病院は単なる治療の場ではなく、地域住民の健康を支えるハブとして機能することを目指しています。

病院から地域へ広がる「ヘルシー・チョイス」

プロジェクトは、2022年の開始以来、着実に成果を上げています。参加した11の病院すべてが、低糖度・安全食品の基準を100%達成しました。病院内では、炭酸飲料の販売を完全に廃止し、患者向けの減糖メニューや健康促進メニューを導入。会議での健康的な軽食の提供、地域社会への健康知識の啓発、そして「グリーンマーケット」の開催など、多岐にわたる活動を展開しています。

病院の生協や自動販売機では、健康的な選択肢(ヘルシアーチョイス)として牛乳や飲料の20%以上を低糖度製品にすることが義務付けられました。特に、患者に提供される牛乳はパッタルン県産の無糖牛乳のみとするなど、具体的な取り組みが進められています。このような病院を起点とした取り組みは、住民が日常的に健康的な選択をしやすい環境を作り出し、長期的な健康寿命の延伸に寄与すると期待されています。

甘い食文化が根強い地域での工夫

しかし、全ての地域でスムーズにプロジェクトが進んでいるわけではありません。特にコンラ郡のようなイスラム系コミュニティでは、伝統的に甘い食べ物や飲み物が食文化に深く根付いており、砂糖摂取量の削減は大きな課題となっています。現地調査では、地域内の飲料販売店で提供される飲み物の糖度が非常に高く(15〜28 Brix)、無意識のうちに多くの砂糖を摂取している実態が明らかになりました。

販売戦略にも問題が見られ、炭酸飲料が目の高さに陳列されたり、レジの横に甘いお菓子が置かれたりするなど、消費者が砂糖を多く含む商品を選びやすい「罠」が存在します。また、栄養表示やヘルシアーチョイスのマークが付いた商品はまだ少ないのが現状です。これらの課題に対し、パッタルン県は病院の敷地外にあるカフェに対し「甘さ控えめ2バーツ(約10円)割引」キャンペーンを実施するなど、地域に合わせた工夫を凝らしています。

「カオチャイソン・モデル」に見る地域連携の成功例

カオチャイソン病院は、30床の地域病院でありながら、地域の健康推進における重要な役割を担っています。同病院が主導する「低糖度病院食品プロジェクト」では、伝統的なデザートを旬の新鮮な果物に変更し、甘さ控えめのハーブドリンクを提供するなど、食習慣そのものを変えることに注力しています。

特に注目すべきは、「グリーンマーケット・リーダー」としての役割です。地域の農家から安全な野菜を仕入れて病院食に活用し、さらにオンライン市場「カオチャイソン・プラザ」をLINEで開設することで、地域経済と健康を結びつけています。病院外では「ラートベーカディン」という市場が開催され、地元の農家や飲食店が有機野菜や甘さ控えめのハーブドリンクを販売。自然素材の容器を使用するなど、環境にも配慮した「健康を愛する人々」の交流拠点となっています。この市場は毎月第2土曜日に開催され、観光客も地域の食文化を体験できるパッタルンのおすすめ穴場スポットとしても人気です。

全域での低糖度推進と今後の展望

パッタルン県では、この「低糖度エコシステム」の成功を受け、2026年には病院で提供される牛乳を100%無糖の地元産牛乳に切り替える方針を打ち出しました。これは、病院が単なる治療施設ではなく、地域全体の健康を牽引するリーダーとしての役割を強化するものです。また、生協や自動販売機でのヘルシアーチョイス製品の割合を20%以上にするなど、具体的な数値目標を設定し、より健康的な選択肢を増やす努力を続けています。

パッタルン病院の副院長スームシー・パトムパーニッチャラット医師は、高齢化が進む県において、糖尿病、高血圧、高脂血症の予防が極めて重要であると強調しています。病院は、甘さ控えめに取り組むテナントに家賃を月500バーツ(約2,500円)割引するインセンティブを導入するなど、民間との連携も強化しています。このような多角的なアプローチにより、パッタルン県は、住民が医師の世話になることなく、持続的に健康的な生活を送れる「低糖度エコシステム」を県全体に広げていくことを目指しています。

タイの食文化は、甘みと辛味、酸味のバランスが特徴的で、特にデザートや飲み物には多くの砂糖が使われる傾向があります。しかし、経済発展に伴う食生活の変化や外食文化の浸透により、砂糖の過剰摂取が糖尿病などの非感染性疾患(NCDs)増加の一因となっていることは、タイ社会全体が直面する構造的な課題です。パッタルン県の「低糖度エコシステム」は、この課題に対し、単なる個人の努力に任せるのではなく、病院という公共機関が主導し、地域全体の食環境を変革しようとする点で画期的と言えるでしょう。

この動きは、在タイ日本人やタイを訪れる旅行者にとっても朗報です。健康志向が高まる中で、タイ料理の美味しさを保ちつつ、糖質を抑えたメニューやヘルシーな食品の選択肢が増えることは、より安心してタイの食文化を楽しめる機会を提供します。特に、病院内のカフェや地域のグリーンマーケットなど、日常的に健康的な選択ができる場所が増えることで、タイでの生活がより豊かで健康的になることが期待されます。

  • カオチャイソン・プラザ(オンライン市場):LINEアプリでアクセス可能なオンライン健康食品市場。地元の新鮮な農産物や加工品が手に入ります。
  • ラートベーカディン(地域市場):カオチャイソン病院周辺で毎月第2土曜日に開催。有機野菜や甘さ控えめドリンク、地元の工芸品などが並びます。
  • ノラケア (Nora Care) ミネラルウォーター:カオチャイソンで採れるミネラル豊富な天然水。弱アルカリ性で健康志向の方におすすめです。
AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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