ベトナム政府は、株式市場を経済発展の重要な資金調達チャネルとして、その育成に向けた強力な解決策を推進することを明らかにしました。4月29日に開催された財務省との会合で、レ・ミン・フン首相が表明したもので、透明性の確保と投資家の信頼醸成が強調されています。VnExpressが報じたところによると、中長期的な資金調達チャネルとしての役割を強化し、経済成長を支える狙いがあります。
経済成長を支える資本市場の役割
首相は、社会経済開発のための国家および社会資源の動員が不可欠であると指摘しました。特に、動員すべき総資本は前政権期の約1.7〜2倍が必要とされる一方で、国家予算が賄えるのはそのうちの約20〜22%に過ぎません。このギャップを埋めるために、株式市場、債券市場、そして国有企業の民営化が重要な資金調達手段として位置付けられています。
首相は「株式市場が公開性、透明性を保ち、投資家や国民の信頼を高めるよう規律を確保しなければならない」と述べ、財務省に対し、株式市場を経済の中長期的な重要資金調達チャネルとするための「強力な解決策」を講じるよう求めました。
株式市場の現状と将来目標
昨年、ベトナムの株式市場の時価総額は、国内総生産(GDP)の約78%に相当する10兆ドン(約60兆円)近くに達しました。政府は、この時価総額を2028年までにGDPの120%に引き上げることを目標としており、これは地域の主要国や世界水準に匹敵する水準です。
財務省への具体的な指示
この目標達成のため、財務省には複数の具体的な指示が出されました。企業債に関する政令の早期完成、国際金融センターの発展、SCIC(国家資本投資経営総公社)の再編、そして第2四半期中の国家投資ファンド設立の検討などが含まれます。
また、5月中に国有企業の効率的な再編・民営化計画を完成させ、損失や無駄を発生させないことも求められています。さらに、外国人投資家の継続的な誘致策や、2045年までの持続的な高成長目標と連携した金融市場全体の包括的な改革案を第2四半期中に策定することも指示されました。
市場の国際的評価と資金流入の期待
ベトナムの株式市場は昨年9月21日、FTSEラッセルによってフロンティア市場からセカンダリー・エマージング市場への格上げが正式に確認されました。これにより、証券会社の見積もりでは、約60億〜80億ドル(約9,000億〜1.2兆円)規模の国際資本がベトナム株式市場に流入する機会が生まれると期待されています。
また、政府債券市場も低迷期を経て回復の兆しを見せています。当局は、今年のこのチャネルを通じた資金調達額を、前年の目標から100兆ドン(約6,000億円)増の900兆ドン(約5.4兆円)と見込んでいます。
財政健全化と税務管理の強化
首相は資本市場の発展に加え、財務省に対し、節約された資金の活用、予算支出の効率化、公共投資の強化、そして特にハノイとホーチミンにおける公共資産(不動産を含む)の整理・処分を進めるよう求めました。
税務管理においては、データの活用を強化し、税収漏れを防ぐよう指示がありました。これにより、国家財政の健全化が図られます。
高成長目標とマクロ経済運営
ベトナムは今年、10%以上の経済成長を目標としています。首相は財務省に対し、複数のシナリオに基づく成長運営計画を早期に策定し、マクロ経済運営における省庁間の連携を強化するよう促しました。また、税金・手数料の免除・減額政策を効果的に実施し、家計事業主の納税義務がない売上高基準を10億ドン(約6万円)に引き上げる規制を展開することも求められています。
今回のベトナム政府の発表は、従来の海外直接投資(FDI)に大きく依存してきた経済構造から、国内の資本市場を育成し、地場企業や民間企業が資金調達しやすい環境を整備しようとする構造的な転換を示唆しています。これは、経済の自立性を高め、持続的な成長を実現するための重要な戦略であり、特に国有企業の改革や民営化の加速は、長年の課題であった非効率性を改善し、市場経済への移行をさらに進める上で不可欠な要素と言えるでしょう。
在住日本人や日系企業にとっては、ベトナムの金融市場の透明性向上と国際化は、新たな投資機会や資金調達手段の多様化をもたらす可能性があります。特に、株式市場の格上げによる国際資金の流入は、市場全体の活性化を促し、企業価値の向上に繋がることも期待されます。しかし、一方で、政府の規制強化や税務管理の厳格化は、事業運営におけるコンプライアンスの重要性を一層高めるため、現地法人での経営体制やガバナンスの強化が求められるでしょう。


