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バンコク・近郊で不良債権急増、差し押さえ物件が市場に殺到

※画像はイメージです(AI生成)

タイの家計債務と不良債権(NPL)が急増し、差し押さえられた不動産(NPA)が市場に大量に流入しています。国家経済社会開発評議会(NESDC)の報告によると、2025年第4四半期の家計債務は16.44兆バーツ(約82.2兆円)に達し、特に住宅ローンと個人ローンにおける延滞が増加。プラチャーチャートが報じたところによると、バンコクやその近郊では、特に300万バーツ(約1500万円)以下の低価格帯住宅や閉鎖された工場物件が市場にあふれています。

タイの家計債務と不良債権の現状

国家経済社会開発評議会(NESDC)事務総長のダヌチャー・ピチャヤナン氏によると、2025年第4四半期のタイの家計債務は前四半期比0.05%増の16.44兆バーツ(約82.2兆円)に達し、対GDP比で86.7%となりました。これは2四半期連続で横ばいだった後の上昇であり、信用状況の悪化が続いています。商業銀行のデータでは、90日以上延滞している不良債権(NPLs)は1,710億バーツ(約8,550億円)で、総貸付の3.23%を占めています。さらに、信用情報機関のデータでは、NPLsは1.31兆バーツ(約6.55兆円)に拡大し、前四半期比9.45%増、総貸付の9.59%を占め、3四半期連続で増加しています。この増加の主な要因は、住宅ローンと個人ローンです。

また、31日から90日延滞している準不良債権(SMLs)は4,800億バーツ(約2.4兆円)に上り、総貸付の3.51%を占め、前四半期の3.09%から増加しました。ダヌチャー氏は、これらのSMLsが将来的にNPLsとならないよう、早急な管理が必要だと強調しています。NESDCは、家計債務問題において、若年層のオンライン消費行動によるクレジットカード債務や個人ローン増加、バーチャルバンクの台頭による新たな債務創出リスク、そして不正確な情報を発信する「フィンフルエンサー」の影響を特に懸念しています。これらの背景には、タイ経済が直面する「中所得国の罠」からの脱却や、質の高い教育を通じた人材育成の課題も横たわっています。

不良資産(NPA)市場の拡大と低価格帯住宅の動向

バンコク商業資産管理会社(BAM)のラク・ウォラキットポーカーソーンCEOは、現在市場には約70万ユニットの差し押さえ不動産(NPA)が存在すると述べています。特に、300万バーツ(約1500万円)以下の低価格帯住宅が最も多く、700万~1000万バーツ(約3500万~5000万円)の物件も増えています。経済状況の悪化により、住宅ローンを払い続けられない人が増え、NPAが市場に流入しているのです。しかし、販売面では、住宅ローンの承認拒否率が70%に達するなど、販売が困難な状況です。300万バーツ(約1500万円)を超える融資の承認率はわずか50%に留まっています。

現在、BAMが保有する販売待ち資産は合計10万件で、そのうちNPAが約3万件、NPLが約7万件です。最も人気のある立地は、バンコクのBTS(スカイトレイン)沿線や、教育機関や職場に近いランシット地域です。これは、都心部の住宅価格が高騰し、手が届かない人が増えているためです。

NPA活用と不動産市場の新たな動き

ラクCEOは、今年は不動産事業者がNPAを買い取り、リノベーションして転売または賃貸する動きが活発化すると予測しています。以前はBAMとMOUを結ぶ事業者は2~3社で、一度に10~20ユニットを購入する程度でしたが、現在は10社に増加しています。特に、チェンマイの不動産事業者であるアーシン・ホールディングスは、2025年に購入した10ユニットを完売し、新たなロットの購入を検討中です。また、V Beyond X社も100ユニット規模のNPAを購入し、6月に市場投入を予定しており、中古住宅市場の活性化が期待されます。

L.P.N.プロパティ・マネジメント(LPN)傘下のLPPプロパティ・マネジメント社も、中古住宅の売買を手がける「Book Up」事業を展開しています。LPPは、ローン返済に困窮している所有者から物件を買い戻し、リノベーション後に新たな借り手や買い手を見つけることで、LPNの在庫管理と収益源の多様化を図っています。LPPの強みは、LPNプロジェクトの法人管理経験、リノベーションチーム、そして賃貸や売却に適した立地を分析する能力です。同社は、パタヤ、チョンブリー、ランシットなどの主要な雇用地域で、約300~500ユニットのNPAの購入に向けた交渉を進めており、今年中に50~100ユニットのNPAを市場に投入する計画です。

工場閉鎖の増加と経済への影響

工業省の統計によると、2026年3月時点で22の工場が閉鎖を届け出ており、総投資額は14億6,037万バーツ(約73億円)、影響を受けた労働者は2,126人です。これらの工場は主にサムットサコーン県とバンコクに集中しており、太陽光発電、精米、木材加工、包装容器製造などの業種が含まれます。2026年第1四半期全体では、合計163の工場が閉鎖し、総投資額は64億433万バーツ(約320億円)、6,328人の労働者が影響を受けました。

この数字は、一部の産業部門における減速を強く示唆しています。高止まりする生産コスト、激しい競争、そして不確実な経済状況が背景にあり、タイ経済の持続的な成長を阻害する要因となっています。特に、タイの製造業は、質の高い人材育成や産業構造の転換という課題に直面しており、今回の工場閉鎖は、そうした構造的脆弱性が顕在化した形と言えるでしょう。

大手デベロッパーの苦境と戦略転換

大手不動産デベロッパーのプロパティ・パーフェクト社は、2026年5月に満期を迎えた社債の利息支払いを完了しましたが、流動性確保に奔走しています。同社はシーロム通りのオフィスビル(1億5,000万バーツ、約7.5億円)と、アイコンサイアム近隣のチャオプラヤー川沿いの8ライ(約1.28ヘクタール)の土地(20億バーツ、約100億円)の売却契約を締結し、3ヶ月以内に現金が入る見込みです。

しかし、世界経済の不確実性や中東情勢の緊迫化が投資環境に影響を与え、資産売却計画は当初より遅れています。同社はコスト削減と業務効率化のため、組織規模を縮小し、下半期には100人以上の従業員削減を計画しています。2026年第1四半期の販売実績は、過去40年間で最低を記録しており、同社は環境に配慮し、家計の費用を削減する新しい基準の住宅を開発するなど、戦略の転換を急いでいます。

不動産市場の新たなトレンドと課題

不動産売買マーケティング協会のワサン・コンチャン会長は、経済の低迷により、ローン返済に困窮した住宅や閉鎖された工場などの中古物件が市場に増加していると指摘しています。特にサムットサコーン県やバンコク近郊では、多くの工場が閉鎖されています。一方で、資金に困った個人が、高利回り(年利15%または月利1.25%)を求めて資産を抵当に入れて資金を調達するケースも増えています。

このような状況下で、投資家や不動産開発業者は、BAMやSAM(タイ資産管理会社)、執行局などから中古物件を買い取り、リノベーションして転売することで、15~25%の利益を得ています。これにより、中古住宅市場は新築市場よりも活発化しており、新築より50%も安く、立地も選べることから人気を集めています。

今回のタイのニュースは、在住日本人や日系企業にとって、タイの不動産市場と労働市場における重要な変化を示唆しています。NPLの増加とNPAの市場流入は、投資家にとっては魅力的な中古物件の購入機会となり得ますが、一方で、経済の減速と工場閉鎖は、製造業を中心にビジネスを展開する企業にとっては、需要の低迷やサプライチェーンへの影響、そして人材確保・雇用の見直しといった課題に直面する可能性を意味します。特に、バンコクやその周辺地域での不動産価格の変動、そして従業員削減といったニュースは、現地での生活や事業計画を再考する上で無視できない要素となるでしょう。

また、この問題の背景には、タイ経済が長年抱える構造的な課題が潜んでいます。NESDCが指摘するように、若年層の消費行動の変化やデジタル金融の進展は、新たな債務問題を引き起こすリスクがあります。同時に、製造業の閉鎖が示すように、生産コストの高騰や国際競争力の低下は、タイが「中所得国の罠」から抜け出す上で乗り越えなければならない壁です。リノベーションによる中古物件の活性化といったポジティブな動きも見られますが、全体としては、経済の持続的な成長に向けた、より根本的な改革が求められていると言えるでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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