ベトナム建設大手シーシーワン(CC1)は、2025年会計年度の監査契約をデロイト・ベトナムとの間で解消し、新たな監査法人を選定しました。これは、事業規模拡大と複雑なプロジェクト増加に伴い、デロイトが監査完了に要する時間がCC1の年次株主総会のスケジュールに合致しなかったためと報じられています。VnExpressによると、CC1は今後も事業再編を推進し、適時適切な情報公開を維持する方針です。
新監査法人の選定と背景
シーシーワンが新たに選定する監査法人は、専門能力、経験、そして同規模・同分野の企業へのサービス実績を評価基準としています。この背景には、ベトナムが長年取り組んできた計画経済から市場経済への移行、そして現代的なコーポレートガバナンスの強化という国家的な目標があります。特に、投資家保護と企業透明性の向上は、外資誘致や経済発展において極めて重要視されています。
以前、シーシーワンはデロイト・ベトナムと2025年会計年度の監査契約を締結していました。しかし、シーシーワンの事業規模が前年比で売上高21%増と大幅に拡大し、ハノイ首都圏を含む広範な地域で高難度の重要プロジェクトを多数展開しているため、デロイト・ベトナムが国際基準の品質管理プロセスを完了するには時間を要すると判断されました。
この時間的な制約が年次株主総会の開催時期と合致しないと判明したため、両社は協議の結果、監査契約を合意の上で終了することに決定しました。シーシーワンの代表者は、新監査法人への円滑な引き継ぎのため、両社が密接に連携すると述べています。
堅調な業績とキャッシュフローの改善
シーシーワンは最近、2026年第1四半期の財務報告を発表し、建設市場が原材料費の変動による圧力を受ける中で、事業規模が引き続き拡大していることを示しました。特に、当期の売上高は2兆2900億ドン(約137億4000万円)に達し、前年同期の1兆4150億ドン(約84億9000万円)から62%もの大幅な増加を記録しました。
さらに、営業活動による純キャッシュフローは7354億ドン(約44億1240万円)と著しい改善を見せ、前年同期の4816億ドン(約28億8960万円)のマイナスからプラスに転じました。これは、建設活動からの資金回収能力とプロジェクト支払いの改善を反映しており、シーシーワンの財務状況における明るい兆候と見なされています。主に、売掛金の規模縮小と棚卸資産の管理強化が、当期のキャッシュフローの質を高めることに貢献しました。
利益構造と資産の拡大
粗利益は前年同期比で29%増の1090億ドン(約6億5400万円)を計上しましたが、原材料価格の変動の影響を受け、税引前利益は6%のわずかな減少となりました。これは、ベトナム経済が世界的なサプライチェーンの変動やインフレ圧力に晒される中で、企業が直面する課題を浮き彫りにしています。
2026年3月31日時点で、総資産は18兆7560億ドン(約1125億3600万円)を超え、2025年末から9.3%、すなわち1兆5930億ドン(約95億5800万円)増加しました。この資産拡大は、シーシーワンがベトナム国内の社会インフラ整備に積極的に貢献している証拠でもあります。
今後の成長余地と国家プロジェクトへの貢献
アナリストは、シーシーワンが多くの大規模プロジェクトを完成段階に進めており、今後収益として計上されるため、さらなる成長の余地があると見ています。同社は、ハノイ首都圏環状4号線の一部であるメーソー橋、バオロク – リエンクオン高速道路、カットライ橋、ドンナイ省のロンフン橋(ドンナイ2号橋)など、ベトナムの主要なインフラプロジェクトに継続的に参加し、受注を重ねています。
現在、シーシーワンは推定42兆5000億ドン(約2550億円)以上の受注残高を抱えており、これは同社の持続的な成長と安定した事業運営の基盤となっています。ベトナム政府が推進する大規模インフラ投資は、国内経済の活性化だけでなく、地域間の接続性向上にも寄与しており、シーシーワンはその主要な担い手の一つです。
今回のシーシーワンによる監査法人の変更は、ベトナム企業が直面するガバナンスと成長の課題を象徴しています。計画経済から市場経済への移行期にあるベトナムでは、企業の規模拡大に伴い、国際的な透明性と信頼性を確保するためのコーポレートガバナンス強化が喫緊の課題です。特に、上場企業や大規模プロジェクトを手掛ける企業にとって、適時かつ正確な財務報告は、国内外の投資家からの信頼を得る上で不可欠であり、今回のデロイトとの契約解消も、この「適時性」を重視した結果と見ることができます。
在ベトナム日系企業や投資家にとっては、このような動きはベトナム経済全体の成熟度を示す指標となります。企業の成長に伴うガバナンス体制の整備は、投資環境の透明性を高め、長期的なビジネス展開の安定性をもたらします。シーシーワンが手掛けるハノイ首都圏環状4号線のような大規模インフラプロジェクトは、ベトナムの経済的変革と持続可能な開発の象徴であり、これらのプロジェクトの推進が、日系企業がベトナムで事業を行う上での物流効率化や新たなビジネス機会創出にも繋がるため、その動向は引き続き注目されます。


