ベトナムの首都ハノイにある大規模展示施設「ベトナム・エキシビション・センター(VEC)」の運営会社VEFAC(ベトナム・エキシビション・フェア・センター株式会社)が、2025年に記録的な15兆ドン(約9兆円)超の純利益を計上しました。これは、VECの本格稼働によるMICE(会議、報奨旅行、国際会議、展示会)産業の急成長を背景としたもので、前年比で実に16倍以上の大幅な増益を達成したとVnExpressが報じています。
ハノイの巨大展示場が牽引する記録的利益
VEFACが5月27日に開催した2026年度年次株主総会で発表された財務報告によると、サービス提供および金融収益の合計は47兆7590億ドン(約2兆8655億円)に達し、2024年と比較して約38倍という驚異的な伸びを示しました。これにより、税引き後利益は15兆4020億ドン(約9兆2412億円)を超え、前年の16倍以上となる過去最高益を記録しました。この飛躍的な成長の主な要因は、2025年に開館したベトナム・エキシビション・センター(VEC)の存在です。
東南アジア最大のMICE施設「VEC」の役割と影響
VECは、総面積90ヘクタールを誇る東南アジア最大級の総合展示施設です。これまでベトナムでは国際基準を満たす会議やイベントのインフラ不足が課題とされてきましたが、VECの開館によりこの問題が解決され、ハノイがグローバルイベントの理想的な開催地となる基盤が築かれました。JICAの報告書でも指摘されているように、ベトナムの経済成長と産業化に伴い、交通インフラとサービスの強化が中部経済圏とダナン市だけでなく、首都ハノイを含む全国で求められており、VECはまさにその一翼を担っています。
国家イベントから国際見本市、文化・エンタメまで多角的な展開
開館初年度からVECはその国際的な運営能力を迅速に証明しました。政府は、ベトナムの独立80周年を記念する「独立・自由・幸福の80年」と題した国の成果展の会場としてVECを選定。2025年8月末から9月中旬にかけて開催されたこのイベントには、1000万人を超える来場者が訪れ、全国で大きな反響を呼びました。
さらにVECは、政治的なイベントに留まらず、大規模な国際見本市の中心地としても機能しています。「秋の見本市2025」では毎日10万人以上が来場し、「ベトナム産業技術ウィーク」では7万人以上の専門家と数千の国際バイヤーを成功裏に誘致しました。文化・エンターテイメント分野でも、最新鋭の施設は大規模な音楽フェスティバルの厳しい要求に応え、「8ワンダー」音楽祭には5万人、「VPバンクeスポーツ」と「T1」のコラボイベントには4万人の観客が集まるなど、多様なイベントを成功させ、ハノイのサービス業や観光業を大きく後押ししています。
将来への投資とハノイ経済の活性化
総会では、2026年の事業計画として、62の国際見本市や展示会を組織し、売上高1兆ドン(約600億円)、イベント部門の税引き後利益6000億ドン(約360億円)を目標とすることが承認されました。長期的な発展計画に必要な資金を確保するため、取締役会は2025年の未分配税引き後利益の全額を運転資金として保持することを決定しました。運営会社は、「豊富な資金力は、当社が世界最新のイベント運営技術を積極的に導入し、競争力を強化し、サービスエコシステムを継続的に改善するのに役立つ」と述べています。
このような大規模なMICE施設の成功は、ハノイの経済に多大な貢献をしています。ベトナムではドイモイ政策による市場経済の導入以来、観光産業の成長が著しく、特にハノイのような主要都市は、国際的なイベント開催を通じてインバウンド誘致を強化し、都市の魅力を高める戦略を進めています。VECの成功は、ベトナムが観光を戦略的産業と位置づける政府の方針とも合致しており、今後のさらなる発展が期待されます。
今回のVEFACの記録的な利益は、ベトナム、特に首都ハノイがMICE(会議、報奨旅行、国際会議、展示会)産業において、東南アジアの新たなハブとしての地位を確立しつつある構造的な変化を示唆しています。これまでベトナムは国際的な大規模イベントを受け入れるインフラが不足しているとされてきましたが、VECのような巨大施設の登場は、このボトルネックを解消し、国際的なビジネス交流や文化イベントの誘致を加速させています。これは、単なる一企業の成功に留まらず、ベトナム政府が掲げる観光産業の戦略的育成と経済成長目標に合致するものであり、今後のベトナム経済の多様化と高度化を象徴する出来事と言えるでしょう。
在住日本人や日系企業にとって、VECの成功は新たなビジネスチャンスの到来を意味します。国際見本市や展示会が頻繁に開催されることで、現地でのビジネスマッチングの機会が増加し、ベトナム市場への参入や拡大を検討する企業にとっては重要なプラットフォームとなります。また、大規模イベントの開催は、周辺のホテル、飲食、交通といったサービス産業にも大きな経済効果をもたらすため、これらの分野に進出する日系企業にとっても、ハノイのMICE産業の活況はポジティブな影響をもたらすはずです。今後、VECを拠点としたビジネス展開や、イベント参加を通じた情報収集の重要性が増すと考えられます。


