ベトナム中部ダナン市の中心部に位置する旧チーラン・スタジアムの解体作業が本格化しており、長年の法的紛争を経て、いよいよ競売にかけられる見通しとなりました。この「ゴールデン・グラウンド」と呼ばれる広大な土地は、過去の汚職事件に巻き込まれ長らく放置されていましたが、政府の都市計画調整承認を受け、新たな開発に向けて動き出しています。VnExpressが報じました。
長年放置された「ゴールデン・グラウンド」の解体開始
ダナン市ハイチャウ区の中心部に位置する旧チーラン・スタジアム跡地は、レー・ズアン、チーラン、ゴー・ザー・トゥー、フン・ブオンの4つの大通りに囲まれた約55,000平方メートルに及ぶ広大な敷地です。かつては市のスポーツの象徴でしたが、ファム・コン・ザイン氏の汚職事件とティエンタイン・グループを巡る法的な問題に巻き込まれ、長年放置されてきました。
現在、この敷地では解体作業が急ピッチで進められています。スタジアムの観客席はすでに覆いがされ、解体作業が進行中。特にレー・ズアン通り側の観客席から優先的に取り壊されており、広大な敷地を更地にするための準備が進められています。これは、資産執行のための競売に向けた重要なステップです。
複雑な土地使用権問題と汚職の影
チーラン・スタジアムの土地は、2010年10月にダナン市がティエンタイン・グループに売却することを承認し、高層商業・サービス複合施設のプロジェクトが計画されました。2011年1月には、この土地は約1.4兆ドン(約84億円)で譲渡されました。しかし、その後、開発業者は土地を10区画に分割し、長期的な土地使用権証明書を取得しましたが、これは2003年のベトナム土地法の規定に違反していると当局によって判断されました。
さらに、これらの土地は担保として利用され、4兆ドン(約240億円)以上の融資が受けられていました。2014年にティエンタイン・グループのファム・コン・ザイン総裁が逮捕されると、プロジェクトは完全に停滞。2016年から2018年にかけて、裁判所はこの資産を差し押さえ、約3.946兆ドン(約236億円)の債務履行を確保するよう命じました。ベトナムの不動産市場では、このように複雑な土地使用権制度と汚職が絡み合い、プロジェクトが頓挫するケースが少なくありません。
競売に向けた動きと住民の懸念
長引く法的手続きを経て、2024年に入り、政府がこの土地の都市計画調整を許可したことで、ダナン市は競売を再開するための基盤を整えることができました。鑑定評価によると、この14区画にわたる土地使用権を含む資産の総価値は、9.7兆ドン(約582億円)以上に上るとされています。
今年4月には、ダナン市投資建設プロジェクト管理委員会が、チーラン・スタジアムの解体請負業者を22億ドン(約1,320万円)で承認。これは当初の予算より50%も低い金額です。建設機械が投入され、数十年前に建設されたコンクリートの壁や梁が取り壊されており、作業員は粉塵を抑えるために水をまきながら作業を進めています。しかし、周辺住民からは粉塵が家屋に侵入する、ホテル宿泊客から騒音の苦情が出るなど、都市開発に伴う環境問題や住民への影響が課題となっています。
今回のダナン市旧チーラン・スタジアムの解体と競売は、ベトナムの不動産市場における構造的な課題を浮き彫りにしています。ベトナムでは土地の所有権が国家にあり、個人や企業は「土地使用権」を持つ形が基本です。この土地使用権の取得や移転には複雑な法規制が絡み、さらに不動産市場の透明度が低いことも相まって、汚職や法的な問題が発生しやすい土壌があります。特に大規模開発においては、しばしば政府の承認プロセスや関係者の利害が錯綜し、プロジェクトが長期にわたり停滞するリスクを内包しています。
在住日本人や日系企業がベトナムで不動産投資や事業展開を検討する際には、このような土地使用権を巡る法制度の複雑さと、それに伴う潜在的なリスクを十分に理解することが不可欠です。今回のケースのように、一度汚職事件に巻き込まれると、解決までに10年以上の歳月を要し、巨額の資産が宙に浮く事態にもなりかねません。ベトナムの経済成長は魅力的ですが、投資判断においては現地の法務・行政手続きに関する専門知識を持つアドバイザーの活用が、予期せぬトラブルを回避するための重要な鍵となります。


