タイ国家経済社会開発評議会(NESDC)は、政府が推進する南部ランドブリッジ計画について、まだ正式な調査を実施していないと発表しました。過去の評価は別のプロジェクトに関するものであり、計画の経済的実現可能性に関する従来の主張を否定。Bangkok Postが報じたところによると、同評議会事務局長は、産業開発との統合が成功の鍵となるとの見解を示しています。
NESDC、ランドブリッジ計画の経済的実現可能性を否定
NESDC事務局長ダヌチャー・ピチャヤナン氏は、ランドブリッジ計画が経済的に実現不可能であるとの主張に対し、それは誤解であると明確に述べました。公の議論で頻繁に引用される評価は、プラユット・チャンオーチャー前首相政権下で検討された「タイ運河プロジェクト」に関するものであり、ランドブリッジ計画とは直接関係ないというのです。
ダヌチャー氏は、NESDCがランドブリッジ計画の詳細な調査は未実施であると強調しました。過去の分析が、関連性のない提案からその実現可能性に関する結論を導き出すことはできないと指摘しています。
過去の比較研究と「中所得国の罠」からの脱却
ダヌチャー氏は、以前の比較研究ではタイ運河、ランドブリッジ、南部経済回廊の3つの開発選択肢が検討されたと説明しました。この研究では、タイ運河が最もリターンが低く、次にランドブリッジが続くとされたが、これは高額な初期投資が主な理由でした。
しかし、この比較は正式な実現可能性評価ではなく、単なる参考資料であったことを強調。タイは「中所得国の罠」からの脱却を目指しており、大規模インフラ開発はそのための重要な国家戦略の一環です。ランドブリッジが単独の物流ルートとしてではなく、産業開発や広範な経済特区と統合されれば、その結果は大きく異なる可能性があると指摘しました。
南部経済回廊(SEC)の成功モデル
より包括的なモデルとして、ダヌチャー氏は南部経済回廊(SEC)を挙げました。SECはインフラ整備と工業団地、農業開発を組み合わせることで、より強力な全体的な利益をもたらすことが判明しています。
政府がランドブリッジ計画を推進する意向であるものの、現時点ではその価値を判断するには時期尚早だという見解です。適切な評価には、詳細なプロジェクト設計、投資構造、そして支援産業の組み込みが不可欠であるとされています。これは、タイが東部経済回廊(EEC)で成功を収めた戦略とも類似しており、高付加価値産業の誘致とインフラ開発を一体的に進めることで地域経済の発展を目指すものです。
西部海岸の深海港開発が鍵
タイの西部海岸には、本格的な深海輸出港が存在しないことが重要な課題だとダヌチャー氏は指摘しました。ラノーンに港を開発し、段階的に拡張することが現実的な第一歩となる可能性があるとしたのです。
このような施設は、国内生産をインド、中東、ヨーロッパ市場に接続し、既存のレムチャバン港の能力を補完する役割を果たすことができます。
環境影響評価と今後の課題
運輸省がランドブリッジに関する詳細な調査を主導しており、最終決定はこれらの包括的なデータに基づいて行われるべきであるとされています。
このプロジェクトは、特にラノーンとチュンポンに計画されている深海港の環境健康影響評価(EHIA)に関して、環境への影響についても厳しい監視を受けています。天然資源環境大臣のスチャート・チョムクリン氏は、関係機関が調査結果を検討し、国民の懸念に対処するために招集されると述べています。環境問題への対応は、プロジェクト承認の重要な障壁となりうるでしょう。
今回のNESDCによる発表は、タイの大型インフラプロジェクト推進における意思決定プロセスの複雑さを浮き彫りにしています。政府が「中所得国の罠」からの脱却を目指し、貿易・投資・物流の戦略的ゲートウェイとしてのタイの地位強化を図る中で、ランドブリッジ計画は重要な位置を占めます。しかし、NESDCが指摘するように、単なる物流ルートとしてのインフラ整備に留まらず、周辺地域の産業開発と一体化した包括的なアプローチが不可欠であり、これは東部経済回廊(EEC)の成功事例からも学ぶべき点と言えるでしょう。
在住日本人や日系企業にとっては、このランドブリッジ計画の動向は、将来的なサプライチェーンや物流戦略に大きな影響を与える可能性があります。特に、ラノーンやチュンポンといったタイ南部の新たな経済圏が活性化すれば、製造業やサービス業における新たな投資機会が生まれることも考えられます。しかし、環境問題や具体的な投資スキームの不透明感は依然としてリスク要因であり、今後の政府の具体的な計画発表と詳細な実現可能性調査の結果を慎重に見極める必要があります。


