タイ政府がサラブリー県ムワクレック産の高品質な牛乳を地理的表示(GI)として登録推進。この取り組みは、タイ酪農発祥の地とされるムワクレック地域のブランド価値向上と、年間56億バーツ(約280億円)に及ぶ酪農経済の保護・発展を目的としています。Khaosodの報道によると、知識財産局は地域の農家支援とアグリツーリズムの連携も視野に入れているとのことです。
タイ酪農の聖地ムワクレックの高品質牛乳
タイ知識財産局は、サラブリー県ムワクレック郡産の「ムワクレック牛乳」を地理的表示(GI)として登録する計画を推進しています。ムワクレックは、1960年代にラマ9世の提唱によりタイで初めて酪農が始まった地域の一つであり、その歴史と伝統が品質の基盤となっています。
この地域は、海抜300〜600メートルの高地と丘陵地帯に位置し、年間を通じて冷涼な気候と肥沃な土壌に恵まれています。これにより、タンパク質やミネラルが豊富な高品質な飼料作物が育ち、乳牛の健康的な育成を可能にしています。地元の農家は、厳選された純血種の乳牛を半自然放牧で飼育し、厳格な衛生基準と管理体制のもとで、乳牛の健康を第一に考えた酪農を行っています。
独特の風味と経済効果:60年以上の実績
ムワクレック牛乳は、その卓越した品質で60年以上にわたりタイ全土の消費者に愛されてきました。甘く濃厚な味わい、なめらかな舌触り、そして独特の芳醇な香りが特徴です。このような品質は、ムワクレック地域の独自の自然環境と熟練した酪農技術の結晶と言えるでしょう。
現在、ムワクレック牛乳は地域経済の重要な推進力となっており、年間生産量は2億5,900万キログラムを超え、総販売額は56億バーツ(約280億円)に達しています。これは、4,200以上の小規模農家にとって安定した収入源となり、地域社会の活性化に大きく貢献しています。
GI登録でブランド価値を確立し、地域経済を活性化
知識財産局のオラモン・サップタウィータム局長率いる調査団は、ムワクレック酪農協同組合の施設を訪れ、GI登録に向けた現地調査を行いました。GI登録は、ムワクレック牛乳の品質と原産地を法的に保護し、他地域からの模倣品や不正使用を防ぐための重要な手段です。これにより、消費者は製品の信頼性を確信でき、地元の農家は市場での交渉力を高めることができます。
サラブリー県では既に、「カオ・ジェックチェーイ・サオハイ」米、「プアックホーム・バーンモー」タロイモ、「マムアンマン・ノーンセーン・サラブリー」マンゴーの3つのGI登録品があり、2025年にはこれらで合計3億7,300万バーツ(約18億6,500万円)の市場価値を創出しました。知識財産局は、ムワクレック牛乳のGI登録も同様に、地域経済に大きな恩恵をもたらすと期待しています。
「物語」で付加価値を創造:アグリツーリズムとの連携も
オラモン局長は、ムワクレック牛乳の市場戦略について、単に高品質な生乳を生産するだけでなく、「物語」を創造することの重要性を強調しました。ムワクレックの酪農家たちの生活や、ラマ9世の提唱に始まる酪農の歴史を消費者に伝えることで、製品に精神的な価値を付加し、ブランド力を強化できると提案しました。
また、ムワクレック酪農協同組合と地域の観光地との連携も推奨しています。これにより、一般的な農産物としての牛乳のイメージを、アグリツーリズムと結びついたプレミアム商品へと転換させることが可能になります。酪農体験や新鮮な乳製品を楽しむ観光は、地域への訪問者を増やし、収入源を多様化させ、より強固な地域経済システムを構築することに繋がるでしょう。
タイ知識財産局の強力な支援と今後の展望
知識財産局、商業省、およびサラブリー県の関連機関は、副首相兼商業大臣の政策に基づき、ムワクレック牛乳のGI登録を推進するために緊密に連携しています。この政策は、農産物の安定化と価値向上、そしてGIを活用した地域経済の発展を通じて、中小企業や地域コミュニティを強化することを重視しています。
GI登録は、ムワクレック牛乳に法的保護を与え、消費者に対してその品質と原産地を明確に保証します。これにより、ムワクレック地域の農家は持続可能な収入と生活の質を向上させることができ、タイの農業ブランド戦略における成功事例となることが期待されています。
タイ政府がムワクレック牛乳をGI登録する背景には、地域経済の活性化と中小企業(SMEs)の競争力強化という国家戦略があります。特に農業分野では、高品質な地域特産品が国内外の市場で差別化され、農家の生活向上に直結するため、GI制度は重要なツールとなっています。ムワクレック牛乳の事例は、単なる商品保護に留まらず、地域コミュニティ全体の持続可能な発展を目指すモデルケースと言えるでしょう。
在タイ日本人にとっても、GI登録されたムワクレック牛乳は、安心して購入できる高品質な乳製品として選択肢が増えることを意味します。スーパーマーケットなどでこの牛乳を見かける機会が増えれば、日々の食卓が豊かになるだけでなく、サラブリー県への小旅行で酪農体験や新鮮な乳製品を味わうアグリツーリズムも楽しめるようになるでしょう。これは、日本の消費者にとっての「食の安全」意識とも合致し、より付加価値の高いタイ産品として認識されるきっかけとなるはずです。
- ムワクレック酪農協同組合 (Muak Lek Dairy Cooperative): 新鮮な牛乳や乳製品を購入可能。
- ファーム・チョークチャイ (Farm Chokchai): 広大な敷地で酪農体験やステーキが楽しめる人気の観光牧場。
- サラブリー県立植物園 (Saraburi Provincial Botanical Garden): 酪農地域に隣接し、自然豊かな環境。


