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クアンニン省発:ITエンジニアがマカ栽培で成功、ベトナム農業に新風

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ベトナム北部クアンニン省イエンツー地区で、元ITエンジニアのグエン・バン・リエム氏(36歳)がマカ栽培事業に転身し、成功を収めています。彼は情報技術の知識と革新的なアプローチを組み合わせ、持続可能な農業と高付加価値な製品開発を実現しました。この取り組みは、ベトナムの地方経済活性化と農業のデジタル化を推進するモデルとして注目されており、VnExpressがその詳細を報じています。

ITエンジニアからマカ栽培への転身、クアンニン省での新たな挑戦

ハイフォン出身のグエン・バン・リエム氏は、長年都市でITエンジニアとして働いていましたが、2022年にマカと運命的な出会いを果たしました。知人から自家栽培・加工されたマカを贈られ、その美味しさに感動したことがきっかけで、リエム氏はマカの大きな経済的潜在力を知ります。彼は数ヶ月間かけてインターネットで情報を収集し、フートー省、ライチャウ省、ソンラ省のマカ栽培モデルを視察。この「ナッツの女王」と呼ばれる作物の可能性に魅了されました。

北部ベトナムの気候を活かしたマカ栽培

タイグエン地方とは異なり、ベトナム北部でのマカ栽培は年に一度の収穫となります。通常、2月から3月に開花し、8月から10月にかけて収穫期を迎えます。この長い期間にわたる栄養蓄積が、マカの風味を豊かにするとリエム氏は語ります。特にクアンニン省のイエンツー地区は、水はけの良い傾斜地が多く、マカの持続的な成長に最適な気候と土壌条件が揃っているといいます。

テクノロジーと持続可能性を追求したビジネスモデル

起業のチャンスを見出したリエム氏は、2022年に貯蓄の全てを投じ、さらに借金をしてバンザイン区でのマカ栽培に投資しました。安定した都市での仕事を辞め、妻と二人の子供がいる中で山間部での農業に挑戦することは、一歩間違えれば全てを失う可能性のある非常にリスキーな決断でした。しかし、家族と地元政府の強力な支援を受け、彼はこの挑戦に踏み切ります。

2023年6月、リエム氏はイエンツー・マカ株式会社を設立。低価格での粗原料輸出という一般的な道を選ばず、国際基準に準拠した深加工製品を目指すという、より困難ながらも持続可能な道を選択しました。同社は原料となるマカの栽培だけでなく、約1,000平方メートルの加工工場に投資し、種子の選定から栽培、加工、そして消費者への提供まで、全工程を管理しています。

IT技術のバックグラウンドを持つリエム氏は、創業当初から最新の機械システムを導入し、加工工程の最適化に注力しました。数十億ドン(約数千万円)もする海外製の産業機械を輸入する代わりに、彼は共同作業者とともに独自の技術で冷風乾燥機や加工機を開発。これらの機械は自動化され、品質管理と食品安全に関するISO標準を満たしています。「私たちが研究開発した機械システムは、特許出願の手続き中です」と彼は誇らしげに語ります。

循環型経済と地域貢献

リエム氏の企業は、クアンニン省科学技術局と外国貿易大学によって、農業と観光分野におけるデジタル変革を適用した「循環型経済」モデルの試験的導入企業に選ばれました。これにより、マカの緑の殻や茶色の殻は有機肥料や活性炭に加工され、再びマカの木を育てるために利用されます。また、マカの花はミツバチを育て、天然蜂蜜という新たな製品ラインを生み出しています。この取り組みは、資源の最適化と環境保護に貢献しています。

リエム氏は、特に農業分野での起業は平坦な道ではないと語ります。資金が足りず、妻と両親から借金をすることもあったといいます。「小規模では突破が難しく、本格的にやろうとすると、資金の問題が多くのハイテク農業起業家を躊躇させます」と彼は話します。

資金と技術が確保された後も、リエム氏にとって最大の脅威は自然災害でした。2024年9月、大型台風ヤギが襲来し、栽培中のマカの木の大部分が倒壊、全体の20%が枯死する甚大な被害を受けました。同社は追加植樹、支柱システムの強化、栽培プロセスの調整を行い、原料供給地域の回復に努めました。

成長と未来への展望

創業から4年以上が経過し、リエム氏が栽培する約500本のマカの木は順調に成長し、高さ2メートルを超え、最初の開花と結実を迎えています。同社はクアンニン省、タイグエン省、フートー省、モクチャウ、ソンラ省、ディエンビエン省などの農家と連携し、栽培指導や病害虫対策、そして収穫物の買い取りを行うことで、地域の農業振興にも貢献しています。

現在、同社は殻付きマカ、マカのナッツ、マカ入りゴマ塩、マカ入り玄米バーの4種類の主力製品を市場に供給しています。これらの製品は、OCOP(一村一品運動)の3つ星から4つ星の認定を受け、2025年にはクアンニン省の農村工業における優れた製品として表彰されています。

リエム氏の決意と科学的なアプローチは、地元政府やクアンニン省科学技術局によって高く評価されており、同社の製品は大規模な見本市や展示会で紹介され、市場開拓が支援されています。イエンツー・マカのブランドは国内で着実に地位を確立しつつあります。「国内顧客の拡大に加え、輸出を目指してパートナーと連携しています。それが長期的に効果的なステップです」とリエム氏は今後の展望を語ります。

リエム氏は2025年に科学技術起業家として表彰され、彼の会社はクアンニン省の35の科学技術企業の一つとして、税金、土地、信用面での優遇措置を受けています。

ベトナムでは、都市部でのIT産業の成長と並行して、地方における農業の高付加価値化が重要な経済戦略となっています。グエン・バン・リエム氏の事例は、まさにそのトレンドを象徴しており、情報技術の専門知識が伝統的な農業分野に新たな革新をもたらす可能性を示しています。これは、農林水産省が推進する「食料・農業・農村基本計画」やJICAが支援する地域活性化プロジェクトにも通じる、持続可能な地域経済循環を創造するモデルとして注目されます。

この動きは、日本のベトナム在住者や投資家にとっても興味深い文脈を持っています。ベトナムの地方経済がこのように多様化し、高付加価値作物の生産が拡大することは、新たなビジネスチャンスや投資機会を生み出す可能性があります。また、高品質なマカ製品は、ベトナムの食文化に新たな選択肢を加え、食の多様性を豊かにするだけでなく、SDGsの観点からも地域社会への貢献や環境保護に繋がるため、今後の展開に期待が寄せられます。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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