ベトナムの首都ハノイで、10年以上前に旧市街の人口分散を目的として建設された再定住用マンションが、その大半が空室のまま放置されていることが明らかになりました。これらの住宅はこれまでほとんど利用されず、市当局は現在、タムホン川に架かる新たな橋の建設に伴う立ち退き住民のために、これらの空室を再割り当てする計画を進めています。VnExpressが報じたところによると、長年の空室問題を受けて、ハノイ市建設局が用途転換を提案しました。
ハノイの再定住住宅、10年以上の空室問題
ハノイ市ヴィエットフン区トゥオンタン再定住区に位置するこの集合住宅は、約10階建ての5棟のマンションから構成されています。建物は統一されたデザインで明るい色に塗られ、各棟には地下駐車場も完備されています。このプロジェクトは、元々ハノイの旧市街の人口過密を緩和し、住民を移住させる目的で計画されましたが、建設から10年以上が経過した現在も、大部分の住戸が空室のままで、ドアには封印が貼られています。
ベトナムでは都市開発やインフラ整備に伴う再定住は一般的な課題ですが、計画と実際の需要とのミスマッチにより、このような空室問題が発生することがあります。JICAの調査報告書も、都市の再整備や土地行政における住宅開発と再定住の重要性を指摘しており、一方でWorld Bankの資料は、土地や住宅市場が効率的に機能しないことが都市の脆弱性を決定すると警鐘を鳴らしています。
空室解消へ、新たな橋建設に伴う移転者受け入れ
この住宅資源の無駄遣いを避けるため、ハノイ市建設局は、NO15A、NO15C、NO16A、NO16B棟にある140戸以上の空室をホンハー区人民委員会に管理移管することを提案しました。これらの住戸は、現在建設が計画されているトゥーリエン橋とチャンフンダオ橋(タムホン川を横断)の建設プロジェクトによって立ち退きを余儀なくされる住民のために割り当てられる予定です。これにより、長年の空室問題が解消され、新たな住民の受け入れが進むことが期待されています。
ダナン市の都市開発に関するJICAレポートでも、インフラ開発に伴う再定住が言及されており、ベトナムの主要都市における都市再編と住宅供給のバランスの難しさを示しています。ハノイ市も同様に、急速な都市化の中で、効率的な土地利用と住民の生活確保が喫緊の課題となっています。
住民の生活実態と課題
マンションの廊下は広く、照明システムと火災報知器が設置されています。各階には約8戸の住戸があり、階段、非常口、技術室、ごみ収集室が配置されています。住戸の広さは約50〜70平方メートルで、それぞれ約3〜4平方メートルのバルコニーが付いています。
NO15A棟に1年以上前から住むグエン・ゴック・ランさんは、「住民が少ないため、マンションはかなり閑散としている」と語っています。また、以前は旧市街の28平方メートルの家に住んでいた81歳のドー・ティ・ズアさんは、土地権利書( sổ đỏ )がなかったため、トゥオンタン再定住区の53平方メートルの住戸に再定住しました。ドーさんは、NO15A棟には警備員が1人しかおらず、1階の出入り口が閉鎖されているため、住民は地下駐車場を通って出入りしなければならない不便を訴え、「セキュリティの改善と、1階のドアが開放され、住民がより便利に移動できるようになることを願っています」と話しています。
未利用スペースの活用と周辺環境
現在、多くの住戸のドアは封印されたままです。各住戸の外側には部屋番号と呼び鈴が取り付けられ、各棟には2基のエレベーターが備わっています。しかし、住民が少ないため、建物前の通行エリアは非常に閑散としています。
マンションの1階ロビーは現在も空室で埃をかぶっており、管理会社はビジネス目的での床面積の賃貸に関する告知を掲示しています。地下駐車場への入り口も多くが内部から閉鎖され、外側には仮のロープが張られています。わずか20戸強の住民しかいないため、駐車場は非常に広く、多くの駐車スペースが空いています。また、各棟の間にある広場は、周辺住民が野菜を栽培するために利用しており、植物が生い茂っています。民間都市開発推進機構の報告書にもあるように、住宅団地での空き家・空き地発生は日本だけでなくベトナムでも見られる課題です。
再定住区の立地と将来性
トゥオンタン再定住区は、大通りに面した比較的良い立地にあります。裏手は住宅密集地と接しており、トゥオンタン市場や小学校、中学校、高校といった学校が半径約2km圏内にあるため、生活利便性は高いと言えます。この立地の良さが、今後の住民増加に貢献する可能性を秘めています。
ハノイ市における都市住宅の歴史的背景と多様性に関するJICAの報告書は、都市化の進行に伴う都市空間の再編と土地所有権配分の重要性を強調しています。トゥーリエン橋やチャンフンダオ橋の建設によって移住する住民がこの再定住区に加わることで、長年放置されてきた空室問題が解消され、地域全体の活性化につながることが期待されます。
ハノイの再定住用マンションが10年以上空室という事実は、ベトナムにおける急速な都市開発が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。旧市街の人口分散という目的は理解できるものの、計画段階での需要予測の甘さや、立ち退き住民の移住プロセスにおける調整不足が、このような大規模な空室という結果を招いたと考えられます。特に、土地権利書( sổ đỏ )を持たない住民への再定住措置は、都市化の進展に伴う土地所有権の複雑な問題と密接に関わっており、政府主導のプロジェクトにおける住民への配慮の難しさを示唆しています。
このニュースは、ベトナムでの生活を考える在住日本人や、不動産投資を検討する日系企業にとって重要な示唆を与えます。政府プロジェクトであっても、その進捗には時間がかかり、計画が変更されたり、想定外の事態が生じたりするリスクがあるということです。インフラ整備と住宅供給の間のタイムラグやミスマッチは、市場の需給バランスに影響を与え、長期的な投資計画や生活環境の安定性に影響を及ぼす可能性があります。ベトナムの不動産市場は成長を続けていますが、このような背景を理解した上で、慎重な意思決定が求められるでしょう。


