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ホルムズ海峡封鎖で湾岸物流再編、サウジアラビアが砂漠横断輸送網を構築

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イランと米・イスラエル間の紛争激化によりホルムズ海峡が封鎖され、湾岸諸国は物流ルートの再編を加速しています。海峡の航行が困難になる中、サウジアラビアの鉱業大手マーデンが数千台のトラックを動員し、砂漠を横断する大規模な輸送網を構築したとVnExpressが報じました。

ホルムズ海峡の緊張と物流の課題

2月末にイランと米・イスラエル間の紛争が激化し、世界の石油供給の約20%、世界の肥料原料の3分の1が通過するホルムズ海峡は、二重の封鎖状態に陥りました。イランは「安全保障のため」として友好的な国籍の船舶のみ通過を許可し、一方の米国もイラン関連船舶のホルムズ海峡からの出港を禁じる措置を発動。この「ボトルネック」化は、国際的な地政学上の環境を大きく揺るがし、エネルギー安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにしています。

サウジアラビア、砂漠横断輸送で危機を乗り越える

この状況を受け、サウジアラビアの鉱業大手マーデンのボブ・ウィルト最高経営責任者(CEO)は、直ちに幹部陣を紅海沿岸の港に派遣し、対策を協議しました。その結果、わずか2週間でサウジアラビアを横断する物流ネットワークを構築。当初600台だったトラックは、現在では3,500台にまで増強され、昼夜を問わず2人のドライバーが交代で運行しています。ウィルトCEOは、この砂漠横断車列によって、5月末までに輸出滞留貨物の解消を目指すとしています。

マーデンの取り組みは、世界的な食料供給に影響を及ぼしかねない肥料不足の緩和に貢献しています。米国とイランの交渉が停滞する中、砂漠を越える貨物輸送は、ホルムズ海峡の緊張が和らぐまでの間、湾岸諸国が貿易の流れを維持するための重要な余地を生み出しているのです。

湾岸諸国の新たな物流戦略

この地政学的な変化は、湾岸諸国に物流地図の再構築を促しています。ホルムズ海峡への依存度を低減するため、一時的な代替手段として陸路や鉄道輸送が注目されています。海運大手のMSCやマースクも、アラビア半島を横断するトラック輸送に切り替えを進めています。この陸上ネットワークは、海運に比べてコストや輸送能力の面で完全に代替できるものではありませんが、現状においては一定の効果を発揮しています。

アラブ首長国連邦(UAE)のスーパーマーケットチェーン「スピニーズ」は、英国から輸入したポテトチップスやオートミールなどをトラックで輸送。このルートは英国ケント州から西ヨーロッパ、エジプト、サウジアラビアを経由し、ドバイまで16日間を要する長距離輸送です。

インフラ投資と多様化する輸送手段

UAEの鉄道貨物会社エティハド・レール・フレイトも、同国東海岸のフジャイラからペルシャ湾沿岸のアブダビまで、数百台の自動車を鉄道で輸送する初の試みを実施しました。これは、国内での自動車輸送における鉄道の活用を示す画期的な出来事です。

また、サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコは、紅海沿岸のヤンブ港に通じる東西パイプラインを利用しており、UAEもフジャイラ経由での原油輸送を強化しています。両国はこれらの石油輸送ルートの能力増強を目指しており、鉄道建設や港湾インフラの拡張も検討されています。

コル・ファッカン港の変貌とグローバル経済の適応力

ヤンブ港よりも規模は小さいものの、オマーン湾に面するコル・ファッカン港は、UAEにとって「命綱」となっています。イラン紛争勃発以来、この港を通過するトラックの数は1日100台から7,000台へと激増。コンテナを積んだ大型トラックが高速道路を行き交う光景は、今や日常の一部です。

コル・ファッカン港は、これまでの単なる中継港から、コンテナがトラックで港から運び出され、通関手続きを経て倉庫や工場へ向かう本格的な輸送拠点へと変貌しました。港を運営するガルフトレーナー社は、わずか2週間で900人の新規雇用を行い、顧客サービス担当者も駐車場管理やゲート管理に配置転換。貨物の仕分けと調整のため、新たなトラック集積所も開設するなど、迅速な対応を見せています。

「まるで一晩でオーケストラを編成し、モーツァルトの交響曲を演奏するようなものです」と、ガルフトレーナー社のファリド・ベルブアブCEOは、この驚異的な適応能力を例えています。これらの砂漠横断車列は、戦争が引き起こすショックに対するグローバル経済の対応能力を如実に示しています。ホルムズ海峡が封鎖されても、湾岸地域の最重要輸出品である石油や天然ガスは、代替ルートを通じて世界市場へ供給され続けているのです。

マーデンの挑戦とサウジアラビアの戦略的地位

マーデンのウィルトCEOにとって、今回の危機は同社のグローバル規模での事業能力を試す機会でもありました。サウジアラビアは、今後10年間で1,100億ドルを投資する計画の一環として、マーデンにリン酸塩、金、アルミニウムの増産を求めています。同社は米国防総省や企業と協力し、希土類精製プロジェクトにも参画。サウジアラビアを、中国への依存度を低減するための重要なサプライチェーンの一角に据えようとしています。

マーデンはサウジアラビアを世界第3位のリン酸塩輸出国へと押し上げました。この鉱物は採掘・加工され、通常であればホルムズ海峡を通じて輸送されます。広大な砂漠を越える輸送は、サウジアラビアが整備された高速道路網を持つため、ある程度容易ではあります。しかし、紅海側の港はリン酸塩の取り扱いを想定していなかったため、マーデンはプレハブ倉庫を設置し、リン酸塩製造に不可欠な硫酸をタンク車に注入するためのパイプラインシステムを構築しなければなりませんでした。

ウィルトCEOは、多くのトラックが空荷で戻るため、陸路輸送は効率が悪いとしながらも、商品価格の急騰が輸送コストの増加を補っていると述べています。「私たちは能力を証明しました。今後は、常に紅海へのルートを確保できるよう、このシステムを強化する必要があります」とウィルトCEOは語り、物流の安定化に向けた決意を示しました。

今回のホルムズ海峡の緊張とそれに伴う湾岸地域の物流再編は、エネルギー・資源のサプライチェーンにおける地政学的リスクの現実を強く示唆しています。中東諸国は、長年にわたり化石燃料の世界への主要供給者としての役割を担ってきましたが、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化といった地政学リスクの高まりを受け、脱炭素化と並行して経済の多角化、そして供給ルートの多様化を加速させています。今回のサウジアラビアやUAEの取り組みは、単なる緊急対応に留まらず、長期的な国家戦略の一環として、エネルギー安全保障と経済レジリエンス(回復力)を強化しようとする構造的な動きと捉えることができます。

日本を含むアジア諸国は、中東からの原油や天然ガス、鉱物資源の供給に大きく依存しており、これらのサプライチェーンの安定性は経済安全保障上極めて重要です。今回の砂漠横断輸送網や港湾機能強化の動きは、ホルムズ海峡という「ボトルネック」に起因する地政学的リスクを分散し、中東からの安定供給に貢献する可能性を秘めています。これは、日本企業が中東地域での事業展開やサプライチェーン構築を検討する上で、新たな選択肢やリスクヘッジの機会となる可能性も示しており、今後のインフラ投資や物流ネットワークの動向は注視すべきでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
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