タイはユーラシア経済連合(EAEU)との自由貿易協定(FTA)締結に向け、カザフスタンと協議を進めています。タイ貿易代表がバンコクで開催されたTHAIFEX–ANUGA Asiaの機会にカザフスタンの政府および民間代表団と会談し、二国間および地域全体の経済協力強化で合意したとKhaosodが報じました。
タイとカザフスタン、戦略的パートナーシップを強化
タイ貿易代表のウィーラポン・プラパー氏は2026年5月25日、THAIFEX–ANUGA Asiaに参加するためにバンコクを訪れたカザフスタン・アルマトイ州副知事のバクートゥーリー・バクートノール氏および政府・民間代表団と会談しました。この会談では、不安定な世界経済情勢の中、両国が戦略的貿易パートナーシップを築くことで合意。タイとカザフスタン間だけでなく、中央アジアから欧州、そしてアジア太平洋地域へと繋がるサプライチェーンの連結を通じた多角的な貿易協力の推進を目指します。
特に、希少鉱物資源、エネルギー、次世代食品加工、そしてデジタル産業、半導体、AI、クラウドサービスといった高度な産業分野での連携強化が焦点となりました。
経済協力と投資促進への具体的なステップ
両国は、タイとカザフスタンの政府機関および民間セクター間の連携を加速させることで一致しました。これにより、人材育成、貿易情報交換、ビジネス・マッチングといった分野での協力が発展し、双方の貿易と投資拡大の機会が創出されます。ウィーラポン氏は、2026年にタイ商務省が主催する貿易促進イベントへのカザフスタンビジネス関係者の参加を呼びかけました。
具体的には、8月19日から21日に開催される物流技術・サービス展示会「TILOG Logistix」と、9月8日から12日に開催される国際宝石・宝飾品展示会「Bangkok Gems & Jewelry Fair」への参加が提案されました。
FTA締結へ向けた共同委員会の設立
さらに、両国は2026年9月頃に第1回タイ・カザフスタン貿易合同委員会を開催することで合意しました。この委員会は、双方の関心分野における貿易・経済協力を持続的に推進するための重要なメカニズムとなります。この取り組みは、将来的にタイとユーラシア経済連合(EAEU)間の自由貿易協定(FTA)締結へと協力レベルを高めるための重要な基盤となると期待されています。
カザフスタン側は、FTA交渉プロセスを速やかに開始できるよう、他のEAEU加盟国への支持と推進を表明しており、交渉の加速に意欲を見せています。
農業技術革新から観光まで、多角的な協力拡大
協議の終盤には、カザフスタンがタイとの協力関係をさらに深化させる強い意欲を示しました。これには、農業イノベーション技術の開発と移転、投資保護措置の推進、さらには税関・関税協力が含まれます。加えて、観光、貿易、サービスといった他の分野での協力拡大も視野に入れており、両国が「地域経済のゲートウェイ」として具体的に発展することを目指しています。
堅調な貿易関係と主要輸出品目
カザフスタンは、独立国家共同体(CIS)およびEAEU加盟国の中でタイにとって第2位の貿易相手国であり、世界全体では第90位に位置しています。2025年のタイとカザフスタン間の貿易総額は1億7043万ドル(約255億円)に達しました。内訳は、タイからカザフスタンへの輸出が9340万ドル(約140億円)、カザフスタンからの輸入が7703万ドル(約115億円)です。
タイからカザフスタンへの主要輸出品目は、自動車・部品、機械・部品、ゴム製品、石油製品、宝石・宝飾品などです。一方、カザフスタンからの主要輸入品目は、原油、その他の金属鉱石、金属くず、化学製品、事務用品、科学・医療用機器などが挙げられます。
タイがユーラシア経済連合(EAEU)とのFTA締結に意欲を示す背景には、ポストTPP時代におけるアジア太平洋地域の経済秩序の再編と、中国の「一帯一路」構想が中央アジアにもたらす影響への戦略的対応が見て取れます。カザフスタンは「一帯一路」の重要な結節点であり、タイが同国との連携を深めることは、中央アジアを経由して欧州へ至る新たな物流ルートやサプライチェーンの構築に貢献し、経済圏としての存在感を高める狙いがあると考えられます。
このFTAが実現すれば、タイの自動車部品やゴム製品、加工食品などの輸出競争力が高まる一方で、カザフスタンからの原油や鉱物資源の安定供給が期待され、タイ国内の製造業にとって原材料調達の多様化に繋がる可能性があります。在タイ日系企業にとっても、新たな市場へのアクセスや、中央アジア諸国を介した欧州市場への展開機会が生まれるなど、サプライチェーン戦略の再考を促す動きとなるでしょう。


