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タイ大手オーシャン・グラス、人気キャラ「バターベア」と提携しB2C市場を攻略

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タイの大手ガラス製品メーカー、オーシャン・グラスがB2C市場への戦略転換を加速。人気のキャラクター「バターベア」とのコラボレーションを通じて、若い世代の消費者、特にZ世代へのアピールを強化し、ライフスタイルブランドとしての地位確立を目指すとプラチャチャート・ネットが報じた。

新戦略でB2C市場を本格開拓

タイの老舗ガラス製品メーカーであるオーシャン・グラスは、新マネージングディレクターであるティーラニー・キッティティーラノン氏の指揮のもと、大幅な事業戦略の転換を進めている。これまでのB2B(企業間取引)およびHoReCa(ホテル・レストラン・カフェ)市場での強固な基盤から、消費者向け(B2C)市場への本格的な進出を目指すものだ。

この背景には、タイ経済の回復が緩慢で、高まる生活費が消費を圧迫している現状がある。中東情勢やエネルギー価格の変動も購買力と事業コストにさらなる圧力をかけており、ライフスタイル商品市場全体で競争が激化している。特に必需品ではない商品については、消費者の購買決定がより慎重になっていると分析されている。

しかし、一方で若い世代の消費者の行動には顕著な変化が見られる。以前は機能性や価格を重視していたのに対し、現在は「感情的な価値」、デザイン、そして使用体験を重視する傾向が強まっている。これは世界的に広がる「プレミアム・エブリデイ・リビング」のトレンドと合致しており、食器・調理器具市場の企業は、品質競争だけでなく、ブランド構築やストーリーテリング、消費者との関係性強化へと戦略をシフトする必要に迫られている。

「感情的価値」を重視するZ世代の購買行動

オーシャン・グラスは、国際的な生産技術と品質において強みを持つものの、新たな課題に直面している。それは、若い世代の消費者がブランドから離れつつあるという認識だ。タンブラーやプラスチックカップ、さらにはファッションブランドやキャラクターグッズといった代替品との競争が激化し、市場シェアを奪われ続けている。

多くの消費者はこれまで「グラス」を単なる機能的な商品と見なし、ライフスタイル商品とは捉えていなかった。そのため、購買決定はブランドへの愛着よりも価格や実用性に重きを置いていた。一方、新規参入企業はデザインやソーシャルメディアを活用したコンテンツ戦略で、急速にトレンドを作り出している。

ティーラニー氏は、多くの消費者がオーシャン・グラスの名前を知っていても、ブランドが「モダン」であるとか「所有したい」と思われているわけではない、特に若い世代にはそう認識されている、と認めている。この状況を打開するため、同社はマーケティング戦略を大きく転換。機能的商品の販売から、デザインとストーリーテリングを通じて「感情的な商品」を創造することに注力し、グラスだけでなく皿、ボウル、抹茶セット、バッグ、その他のライフスタイル商品へとポートフォリオを拡大している。

人気キャラクター「バターベア」とのコラボ戦略

ブランドを刷新するための重要な戦略として、オーシャン・グラスは、若い世代に強力なファンベースを持つ人気キャラクター「バターベア」(หมีเนย)とのコラボレーションマーケティングを選択した。同社はバターベアが高い「感情的資産」を持ち、消費者の感情と明確に結びつくことができると見ている。オーシャン・グラスの高品質な製品と製造経験が融合することで、機能性と感情的価値が一体となった商品が生まれると期待されている。

このコラボレーションコレクションは「マイ・プレジャー・モーメント」をコンセプトに開発され、日常生活におけるささやかな幸せの瞬間を表現している。夏、雨季、秋、冬の4つの季節をテーマに、グラス、ボトル、フードボックス、抹茶セットから、旅行バッグやグラス用バッグまで、多岐にわたる商品が展開される。

このコラボは大量生産品ではなく、限定コレクション戦略と、Z世代の主要プラットフォームであるオンライン販売を通じて、ファン層における話題作りを重視している。先行して市場投入されたサマーコレクションは、TikTokで一部商品が1時間足らずで完売するなど、予想を超える反響を得た。これは、現代の消費者が一般的な商品よりも、ストーリーテリングや感情的なつながりを持つ商品に対しては、喜んで対価を支払う傾向があることを示している。

ティーラニー氏は、8月26日にEMSPHEREで新コレクションを発表し、継続的な話題作りと、これまでオーシャン・グラスを知らなかった新規顧客層の開拓を目指すと述べた。さらに、6月には、バターベアの誕生日にちなんで1,406セット限定で、耐熱ガラス製の「ダブルウォールコレクション」を発表予定で、空港のブースなど特定チャネルで販売し、旅行者層にもアプローチする計画だ。

グローバル市場と既存B2B事業の維持

こうした動きは、オーシャン・グラスがOEMおよびB2B製品の製造業者から、オムニチャネル戦略(モダン・トレード、小売、ソーシャルコマース)を通じて、本格的な消費者ブランドへと転換を図っていることを示している。これにより、顧客との接点を増やし、長期的なブランド認知度を高める狙いがある。

同時に、同社はHoReCaおよびB2Bの既存顧客基盤を維持していく方針だ。特にホテル、レストラン、カフェ業界は、世界経済の減速や購買力の低下によりタイの観光産業全体が減速傾向にあるものの、高品質で包括的な製品に対する需要は引き続き高い。ジェトロの報告書が指摘するように、中期的には人口増加と経済成長による消費市場の拡大が期待されるが、短期的には消費マインドが予測しにくい状況が続くため、多様な市場へのアプローチが不可欠となっている。

プレミアム食器市場では、海外ブランドや、キャラクターとコンテンツを活用して市場に参入するライフスタイルブランドとの競争が激しい。しかし、オーシャン・グラスは、特に「クリスタリン」素材を使用し、プレミアムホテルやレストランで人気を博しているブランド「ルカリス」に代表される、製造基準と素材品質における強みを持っている。

現在、同社は150以上のコレクション、450以上のSKU(最小在庫管理単位)を展開しており、主要市場はASEAN、インド、中国、アジア太平洋地域である。ガラス製造の主要原料である砂は、タイの砂が高い鉄分含有量のため高品質なガラス製造に適さないことから、オーストラリア、ベトナム、マレーシアから輸入している。

将来的には、アジアを中心に海外市場でのコラボレーションモデルの展開も検討しており、消費者、特にライフスタイル商品やキャラクター商品への関心が高まっている地域での成長を目指す。同社の最終目標は、単にB2C売上を増やすだけでなく、タイの消費者にオーシャン・グラスブランドへの「感情」を再び呼び起こし、世界市場で競争できるプレミアムライフスタイルブランドとして、タイブランドの地位を高めることにある。

今回のオーシャン・グラスの戦略転換は、タイの消費財市場における構造的な変化を明確に示している。かつては機能性や価格が重視された時代から、Z世代を中心とした若い消費者が「感情的価値」や「自己表現」を商品に求めるようになったことで、企業は従来のB2B中心のビジネスモデルから、よりパーソナルなB2Cアプローチへとシフトせざるを得なくなっている。これは、単なる製品の多様化に留まらず、ブランドが提供する体験やストーリーが購買意欲を左右する、新たな消費文化の到来を象徴している。

この動きは、タイ在住の日本人や日系企業にとっても重要な示唆を与える。タイ市場で成功するためには、もはや高品質な製品を提供するだけでは不十分であり、現地の消費者の感情やライフスタイルに深く寄り添ったマーケティング戦略が不可欠となるだろう。特に、ソーシャルメディアを通じて急速にトレンドが形成される現代において、人気キャラクターとのコラボレーションや限定商品の展開といった手法は、短期間で大きな話題を生み出し、ターゲット層の心を掴む上で有効な手段となり得る。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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