タイ政府は、国民の生活費負担軽減のため、LPG(液化石油ガス)の価格凍結をさらに2ヶ月間延長することを決定しました。タイの報道によると、世界的なエネルギー価格の高騰を受け、2026年6月1日から7月31日まで実施され、家計への影響を緩和する狙いがあります。
LPG価格凍結、バンコク市民の生活支援を優先
タイのエネルギー政策委員会(EPAC)は、LPGの卸売価格を1キログラムあたり20.9179バーツに据え置き、これにより15キログラムのLPGタンクの小売価格を約423バーツ(約2,115円)に維持することを決定しました。この措置は、世界経済の不安定な状況下で国民の生活費負担を軽減することを目的としています。
エネルギー省のエカナット・プロムパン大臣は、世界市場でのLPG価格が依然として高水準にあるにもかかわらず、政府は家計、特に一般家庭の生活費支援を最優先していると強調しました。しかし、この価格凍結により、燃料基金のLPG部門は386億4,900万バーツ(約1,932億4,500万円)もの巨額の赤字を抱えています。
国際情勢とタイのエネルギー戦略
今回のLPG価格凍結の背景には、米国・イスラエル・イラン間の紛争など、国際的な地政学リスクによるエネルギー価格の変動があります。2025年3月から2026年5月にかけて、世界のLPG市場価格(CP)はトンあたり542.50ドルから775.00ドルへと約43%も上昇しました。もし価格凍結がなければ、15キログラムのLPGタンクは小売価格が約467バーツ(約2,335円)に達すると見込まれていました。
タイはASEAN(東南アジア諸国連合)の中でも比較的高度な科学技術力を持つ国ですが、エネルギー資源の多くを輸入に頼っています。このような状況下で、政府は国内のエネルギー安定供給と国民生活の保護を両立させるための難しい舵取りを迫られています。
ディーゼル燃料のバイオディーゼル混合比率維持
EPACはLPG価格凍結と並行して、ディーゼル燃料へのバイオディーゼル混合比率をB7に維持する方針も決定しました。この措置は2026年6月14日から9月13日までの3ヶ月間実施されます。B7ディーゼルを継続的に使用することで、1日あたり約137万リットル(月間約4,100万リットル)の原油輸入を削減できると見込まれています。
これは、中東情勢の不確実性がホルムズ海峡を通る石油輸送ルートに影響を与える中で、海外からの石油依存度を低減し、タイのエネルギー安全保障を強化する上で重要な戦略です。タイ政府は、代替エネルギーの推進と国際市場の変動への対応を通じて、エネルギーの安定供給体制を構築しようとしています。
国内パーム油産業の支援
B7ディーゼル政策の維持は、エネルギー安全保障だけでなく、国内の農業セクター、特にパーム油産業にも大きな恩恵をもたらします。パーム油の生産量が増加する時期に、B7ディーゼルは粗パーム油(CPO)の需要を創出し、月間約3万4,000トン以上を吸収できると予測されています。
これにより、国内のパーム油市場の需給バランスが保たれ、パーム油農家の価格安定と所得維持に貢献します。パーム油産業はタイ経済の重要な柱であり、政府はエネルギー政策を通じて、農村部の経済的安定と持続可能な農業発展も同時に目指しています。
今回のLPG価格凍結とディーゼル燃料政策の維持は、タイに在住する日本人や日系企業にとっても、生活費や事業コストに直接的な影響を及ぼします。特に飲食店や製造業など、燃料を多用する業界にとっては、価格の安定が経営計画の予測可能性を高め、不測のコスト増大リスクを軽減するでしょう。タイの物価動向が注目される中、政府によるこのような介入は、短期的な経済の安定化に寄与すると考えられます。
この政策は、国際的なエネルギー価格の変動という外部要因に対し、国内の生活安定と産業支援という内部要因のバランスを取ろうとするタイ政府の複合的な戦略を示しています。エネルギー自給率の向上と国内農業の保護は、タイが長期的に目指す経済的自立性と持続可能性において、不可欠な要素として位置づけられています。


