タイ漁業局は5月16日より、淡水魚の産卵・稚魚育成期間にあたる「レッドウォーターシーズン2026」を開始しました。タイ全土を3段階に分け、禁漁期を設けることで淡水魚資源の保護を図ります。Prachachatが報じたところによると、違反者には最大5万バーツ(約25万円)の罰金が科されるとのことです。
タイ全土で淡水魚の産卵期を保護
タイ漁業局は、淡水魚の産卵と稚魚の育成を保護するため、「レッドウォーターシーズン2026」と称する資源管理措置を5月16日から開始しました。この措置は1964年から継続されており、淡水魚が繁殖する機会を確保することを目的としています。近年では、気候変動に直面した生態系の保護が喫緊の課題となっており、タイのこの取り組みは、持続可能な漁業資源管理の模範と言えるでしょう。2025年には新たな規定が導入され、各県の漁業委員会が地域の状況に応じた具体的な漁業規制を設定できるようになりました。
広範囲に及ぶ禁漁期、3つのフェーズで実施
「レッドウォーターシーズン2026」は、タイ全土を以下の3つの期間と地域に分けて実施されます。この期間中は、指定された水域での漁業活動が厳格な規制の対象となります。
- フェーズ1:5月16日~8月15日
チェンライ、チェンマイ、ナーン、パヤオ、プレー、メーホンソン、ランパーン、ラムプーン、ウッタラディット、ターク、カムペーンペット、ピッサヌローク、スコータイ、ピチット、ルーイ、ウドンターニー、ノンカーイ、ブンカーン、ナコーンパノム、サコンナコーン、カンチャナブリ、ラーチャブリー、ペッチャブリー、プラチュアップキーリーカン、チュムポーン、スラートターニー、ナコーンシータンマラート、ラノーン、パンガー、プーケット、クラビー、トラン、サトゥーンの33県と、カーラシン県のラムパオ貯水池。 - フェーズ2:6月1日~8月31日
ノンブアラムプー、コーンケン、チャイヤプーム、ナコーンラーチャシーマー、マハーサーラカーム、カーラシン(ラムパオ貯水池を除く)、ローイエット、ムックダーハーン、ヤソートーン、アムナートチャルーン、ウボンラーチャターニー、シーサケート、スリン、ブリーラム、ペッチャブーン、ナコーンサワン、チャイナート、ウタイターニー、シンブリー、ロッブリー、アーンソーン、アユタヤ、パトゥムターニー、スパンブリー、サラブリー、ナコーンパトム、ノンタブリ、バンコク、サムットプラーカーン、サムットサーコーン、サムットソンクラーム、ナコーンナーヨック、プラーチーンブリー、サケーオ、チャチューンサオ、チョンブリー、ラヨーン、チャンタブリー、トラートの39県。 - フェーズ3:9月1日~11月30日
パッタルン、ソンクラー、パッターニー、ナラーティワート、ヤラーの5県。
これらの期間中、河川、運河、小川、沼地、貯水池、ダム、自然に冠水する森林や土地など、すべての淡水域での漁業が禁止されます。
許可される漁具と違反時の罰則
禁漁期中も、特定の漁具と方法での漁業は許可されています。例えば、すべての種類の釣り針(ただし、引き裂くような使用方法の長い仕掛けや複数の釣り針は除く)、口径2メートル以下の網、たも網、すくい網、ヤオ、チャナン(ただし、3つ以上の漁具を同時に使用しないこと)、スーム、チャムワック、ソーム、サイ、トゥム、イージュウ、ラン、深さ6尺(約3メートル)以下の投網などが含まれます。これは、多様な漁具が許容されつつも、資源への影響を最小限に抑えるための配慮と言えるでしょう。しかし、各県の漁業委員会がより厳格な保存措置を定めている場合は、その県の規定に従う必要があります。
この発表に違反した場合、2015年漁業令第70条に基づき、5,000~50,000バーツ(約25,000~250,000円)の罰金、または捕獲した水産物の価値の5倍に相当する罰金が科せられます。
気候変動と生態系保護への取り組み
漁業局は、この措置が長年にわたる科学的評価に基づいていると強調しています。特に、2025年の評価では、淡水魚の繁殖期が5月下旬から8月下旬にかけて最も顕著であり、7月下旬がピークであることが確認されました。また、繁殖期全体は4月下旬から9月下旬まで続くことが示されています。2026年の気象庁のエルニーニョ/ラニーニャ予測も考慮され、4月から6月にかけて通常の気候状態が続き、その後エルニーニョ状態に移行する可能性が示唆されています。このような気候変動の影響は淡水システムに大きな影響を及ぼすため、漁業局は雨季の初期から中期にかけての淡水魚保護を重視しています。
漁業局は、「Fisheries Connect for Sustainability」というコンセプトに基づき、すべての関係者と協力して、タイ全土の淡水生態系の回復と豊かさを目指しています。これは、生物多様性の保全と回復を通じて、生態系が維持されるという世界的な認識と一致するものです。
今回のタイ漁業局による「レッドウォーターシーズン」の継続は、同国が長期的な視点で自然資源管理に取り組んでいる姿勢を明確に示しています。特に気候変動による影響が顕在化する中で、淡水生態系の健全性を維持しようとするこの取り組みは、単なる漁業規制に留まらず、地域の生物多様性と持続可能な生活の基盤を守るための重要な構造的アプローチと言えるでしょう。過剰漁獲や環境破壊が世界的な課題となる中、タイのこのような施策は、バランスの取れた生態系と経済活動の両立を目指す好例として評価できます。
この禁漁期は、タイの淡水魚を巡る食文化や市場にも一時的な影響を与える可能性がありますが、長期的にはより豊かな水産資源を確保し、地域住民の生活安定に貢献するものです。在タイ日本人にとっても、この時期にタイのローカル市場やレストランで手に入る淡水魚の種類が限られる場合があることを理解することで、タイの文化や自然環境への敬意を深める機会となるでしょう。このような自然保護への取り組みを知ることは、タイでの生活や旅行をより深く味わうことに繋がります。


