ホームベトナムアジアニュース 2026/5/24

アジアニュース 2026/5/24

出典:元記事

フードデリバリー大手ウーバーが、ドイツの競合デリバリー・ヒーローを116億ドル(約1.8兆円)で買収する可能性が浮上しました。この買収検討は、デリバリー・ヒーローのニクラス・エストベリCEOの辞任表明や主要株主からの戦略変更要求と同時期に報じられており、ロイターが5月23日に詳細を伝えました。

ウーバー、デリバリー・ヒーロー買収で市場再編か

報道によると、ウーバーによる買収検討は、デリバリー・ヒーローの評価額を1株あたり33ユーロ(約38.3ドル)と見積もっています。これは、ロンドン証券取引所のデータに基づくと、交渉価格がデリバリー・ヒーローの週末終値より1.76%低い水準です。ウーバーは先週、デリバリー・ヒーローの株式保有率を7%から19.5%に増やし、筆頭株主になったばかりで、この株式は約17億ユーロ(約2,800億円)に相当すると計算されています。

世界のフードデリバリー市場では、近年M&Aが活発化しており、競争環境が大きく変化しています。昨年はDoorDashがDeliverooを29億ポンド(約5,800億円)で買収したほか、オランダの投資会社ProsusもJust Eat Takeawayを41億ユーロ(約6,800億円)で買収するなど、再編の動きが続いています。これは、デジタルを通じたサービス提供が拡大する中で、プラットフォーム間の競争が激化している現状を反映しています。

デリバリー・ヒーローCEO辞任と株主圧力

デリバリー・ヒーローのニクラス・エストベリCEOは、長年にわたる主要株主からの戦略変更圧力に耐えかね、辞任を表明しました。権限移譲は遅くとも2027年3月31日までに完了する予定です。同社の15%の株式を保有する主要株主Aspexは、デリバリー・ヒーローに対し、事業市場の縮小とエストベリCEOの早期後任探しを要求していました。

これは、フードデリバリー業界が直面する課題を浮き彫りにしています。ギグワーカーの再考を促すような労働環境や、成長戦略の持続可能性に関する株主からの厳しい目が背景にあります。プラットフォーム企業は、単なる成長だけでなく、収益性や持続可能な事業モデルの構築が強く求められるようになっています。

ベトナム市場撤退の背景とグローバル競争

デリバリー・ヒーローは、かつてベトナム市場で「バエミン」ブランドを展開していましたが、現地の激しい競争のため、3年前に撤退しています。ベトナムを含むアジアの新興市場では、デジタルを通じたサービス、特にEコマースやデリバリー分野で新たな経済機会が創出されていますが、その競争は想像を絶するほど熾烈です。多くのスタートアップが参入し、低価格競争やサービス品質の向上が常に求められています。

このような背景から、グローバルなフードデリバリー企業は、市場での優位性を確保するために、M&Aによる規模拡大や効率化を追求する傾向にあります。かつてベトナム市場から撤退したデリバリー・ヒーローが、今度はウーバーの買収対象となることは、世界的なデジタルプラットフォームの成長戦略と市場再編のダイナミズムを示しています。

厳しさを増すデジタルプラットフォーム規制

フードデリバリー市場の再編には、各国の規制当局による動きも大きく影響しています。オランダのProsusがJust Eat Takeawayを買収した際には、欧州委員会が独占禁止法の順守を求め、Prosusは同分野の他社への投資の一部を売却せざるを得なくなりました。当時、Prosusはデリバリー・ヒーローの筆頭株主であったため、ウーバーに株式の一部を売却することになったのです。

Financial Timesによると、ウーバーはこの取引を「機会的」と表現した一方で、Prosusは欧州の規制当局が自社に株式売却を強制し、結果として米国企業に買収の機会を与えたと批判しています。これは、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する各国の法律や、競争政策がグローバルなM&Aに与える影響の大きさを物語っています。

デジタルプラットフォーム業界におけるM&Aの活発化は、市場の成熟と競争激化、そして各国の規制当局による独占禁止法適用強化という構造的な背景が深く関わっています。特に欧州連合(EU)の規制動向は、グローバルなプラットフォーム企業に大きな影響を与え、事業再編を促す要因となっています。これは、ICTインフラ整備と競争政策が密接に絡み合う現代経済の構造的課題であり、今後も規制と企業戦略のせめぎ合いが続くと考えられます。

ベトナム市場で激しい競争に直面し、撤退を余儀なくされた「バエミン」の事例は、デジタルサービス分野における新興国市場の特異性を示唆しています。日本企業がベトナムを含むアジア市場でデジタルプラットフォーム事業を展開する際には、単なる市場規模だけでなく、現地固有の競争環境や規制動向を深く理解し、柔軟な戦略を構築することが不可欠となるでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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