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【バンコク】大学入試TCAS70が改革、ポートフォリオ選抜見直しで教育格差是正へ

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タイの大学入学統一試験制度「TCAS70」が、受験料の無料化やポートフォリオ選抜基準の見直しを含む大規模な改革を発表しました。この改革は、教育機会の不平等を是正し、学生の負担を軽減することを目的としており、プラチャーチャート・トゥラキット紙が報じています。

「TCAS70」が目指す教育の平等

タイ学長会議(ทปอ.:タイ学長会議)は、2026年度(タイ暦2569年)から適用される大学入学統一試験制度「TCAS70」の新たなガイドラインを発表しました。「TCAS平等」というコンセプトのもと、特にオンライン上で学生や保護者からの大きな注目を集めています。

TCAS制度の変更は、学生の学習計画や経済的負担、希望する学部へのアクセスに直接影響を与えるため、ソーシャルメディア上では常に活発な議論が交わされてきました。

ソーシャルメディアでの反響分析:TikTokが主要プラットフォームに

データセット社は、ソーシャルメディア分析ツール「dxt:360」を用いて、2026年4月26日から5月12日までの期間に「TCAS平等」に関するソーシャルメディア上の反響を調査しました。教育関連の話題は総エンゲージメント数が245万回以上に達し、タイの学生や保護者が教育制度の変化に常に高い関心を持っていることが示されました。

特に注目すべきは、投稿数ではFacebookが最も多かったものの、エンゲージメントの大部分はTikTokとInstagramに集中していた点です。TikTokでは1,891件の投稿から233万回以上のエンゲージメントを記録し、Facebookの2万3千回を大きく上回りました。この傾向は、TCAS70に関する意見表明者の多くが若年層の学生であり、彼らがTikTokを主要な情報共有プラットフォームとして利用していることを示唆しています。

受験料負担の軽減:学生と保護者からの喜びの声

TCAS70の改革で最も注目されたのは、受験料の負担軽減です。TGAT/TPATの全科目が無料となり、A-Levelも最大7科目まで無料受験が可能になりました。これまでの制度では、医学系学部志望の学生がTPAT1(専門科目)の受験に800バーツ(約4,000円)を要するなど、家計にとって大きな負担となっていました。

ソーシャルメディア上では、この政策を「真に負担を軽減する」「人生を変える政策」と高く評価する声が多数見られました。特に、低所得家庭の学生にとっては、これまで5~7科目の受験料が重荷であったため、今回の無料化は大きな朗報です。

しかし、一部からは懸念の声も上がっています。地方での紙媒体試験会場の整備状況や、理系と社会系の両方を志望する学生にとって7科目無料枠では不十分であり、追加費用が発生する可能性が指摘されています。

ポートフォリオ選抜の見直し:「格差を測るラウンド」からの脱却

もう一つの大きな変更点は、ポートフォリオ選抜の基準見直しです。タイ学長会議は、各大学に対し、ポートフォリオ選抜枠を平均30%以下に抑えるよう要請しました。これは、他の選抜方式への機会を増やすためです。

これまでのポートフォリオ選抜は、ソーシャルメディア上で「ポートフォリオラウンド=ステータスを測るラウンド」と揶揄されることがありました。これは、裕福な家庭の学生が、高価なキャンプ参加や専門家による指導を受けることで、見栄えの良いポートフォリオを作成し、実力に関わらず有利になるという不平等を反映していました。

TCAS70では、高校生に研究論文の発表を義務付けるなど、不必要な負担を強いる基準を撤廃。さらに、標準化されたポートフォリオシステム「TCASFolio」を導入し、教育機会均等基金(กสศ.)の学生にはポートフォリオ選抜の受験料を25%割引することで、初段階からの格差是正を目指しています。

席の確保(กั๊กที่นั่ง)とポートフォリオ比率削減への疑問

受験料の無料化によって「とりあえず出願する」学生が増え、結果として「席の確保」(กั๊กที่นั่ง)が生じ、他の受験生に影響を与える可能性も指摘されています。また、ポートフォリオ選抜枠の削減については、これまでポートフォリオ作成に多大な時間と費用を費やしてきた学生から、既存の計画への影響を懸念する声が上がっています。

これらの議論は、「長期的な平等」と「既存のルールに従って準備してきた人々への公平性」との間で、いまだ完全な答えが見つかっていない複雑な問題を浮き彫りにしています。

まとめ:タイの教育制度改革への課題と展望

ソーシャルメディアのデータは、「TCAS平等」の取り組みが多くの面で肯定的に受け止められていることを示しています。特に、受験料の負担軽減策は明確な支持を得ています。しかし、地方での試験会場のアクセシビリティ、TCASFolioシステムが創造性を求める分野でどこまで柔軟に対応できるか、そして既存の計画を持つ学生への公平性など、運用面での課題も残されています。

TCAS70は、多様な能力を持つ学生を評価するために設計された「中央システム」に過ぎません。このシステムをより良く、より公平にするためには、一度の政策発表で終わるのではなく、「傾聴し、調整し、再び傾聴する」という継続的な対話が不可欠です。学生たちの声は、タイの教育制度を前進させるための最も貴重な情報源となるでしょう。

タイの教育制度における格差は、長年にわたり社会経済的背景と密接に結びついてきた構造的な課題です。今回のTCAS70改革は、受験料の無料化やポートフォリオ選抜の見直しを通じて、この根深い問題に真正面から取り組もうとする重要な試みと言えるでしょう。特に、高学歴化が進行するタイ社会において、公平な教育機会の提供は、社会全体の持続可能な発展に不可欠な要素です。

在タイ日本人家庭の子どもたちがタイの大学に進学するケースは稀かもしれませんが、この教育制度改革はタイ社会の動向を理解する上で重要な指標となります。タイの若者たちがTikTokなどのソーシャルメディアを通じて積極的に意見を表明し、社会変革を求める姿勢は、今後のタイの発展において鍵となるでしょう。日本社会が直面する教育問題とも共通する部分があり、他国の取り組みは常に示唆に富んでいます。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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