ベトナムのグエン・バン・タン副首相は、起業において最も重要なのは大きな願望であり、必ずしも潤沢な資金ではないと強調しました。これは、6月10日にハイフォンで開催された「2026年優秀若手起業家賞」の授与式での発言で、VnExpressが報じました。
ハイフォンで語られた「大いなる願望」
6月10日、ハイフォンで開催された「2026年優秀若手起業家賞」授与式で、グエン・バン・タン副首相は、ベトナムが科学技術、デジタルトランスフォーメーション、人工知能、国際統合の機会に満ちた新たな発展段階に入っていると述べました。この文脈において、若手起業家は雇用と物質的富を生み出す原動力であり、新しいアイデアを製品、テクノロジー、社会への新たな価値へと変革する先駆的な力であると強調しました。副首相は、起業は必ずしも大規模なリソースから始める必要はなく、「大きな願望と、その願望を追求し続ける粘り強さ」から始まるべきだと説きました。経済産業省の調査報告書によると、ベトナムではスタートアップエコシステムが確立されており、若手起業家が急速に企業価値を高めています。
デジタル時代に飛躍するベトナムのスタートアップ
タン副首相は、限られた資本で小さなオフィスから始まった起業の成功事例に触れ、近年、若手ベトナム人によって設立された多くのテクノロジー企業が、デジタル製品、ソフトウェア、AIソリューションを国際市場に投入していることを紹介しました。これは、デジタル時代において、ベトナム国内のアイデアとグローバル市場との距離が「かつてないほど近づいている」ことを証明しています。JICAの調査でも、ベトナムの人材育成戦略において、こうしたイノベーションが重要な貢献を果たすとされています。
成長を続けるベトナムのスタートアップエコシステム
「スタートアップエコシステム評価レポート」のデータによると、2025年末までにベトナムには約4,000社の革新的なスタートアップ企業が存在し、その中には2社のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)が含まれ、多くの有望なスタートアップが民間経済セクターに属しています。これは、タイのコングロマリットが企業イノベーションプログラムやCVC部門を保有し、資金だけでなく戦略的パートナーシップも提供しているのと同様に、ベトナムでも強力な支援体制が構築されつつあることを示唆しています。
若手起業家への期待と社会貢献
タン副首相は、若手起業家にとって最も価値のあることは、収益や成長ではなく、自身の限界を超える旅路であると述べました。各世代にはそれぞれの歴史的使命があり、若手起業家の世代は、テクノロジーと革新を通じてベトナムブランドを飛躍させ、世界レベルに引き上げるという新たな使命を担っていると語りました。政府の指導者は、若手起業家に対し、「野心を育み、強力な革新を続け、より深く統合する」よう促しました。国が必要としているのは、正当な方法で富を築くだけでなく、愛国心、ビジネス倫理、社会的責任を持つ起業家であると強調しました。野村グループのサステナビリティレポートにもあるように、企業市民としての社会貢献活動の重要性は世界的に認識されています。
政府の長期的な支援と投資環境改善
若手起業家の成長を促進するため、副首相は、省庁、青年団、協会に対し、単なる奨励や宣伝に留まらず、資本、経営、テクノロジーに関するメンターネットワークを構築することで、スタートアップと長期的に協力するよう求めました。若手企業は、イノベーション、グリーン・デジタル転換の先駆者となり、大手企業や投資ファンドと積極的に連携してサプライチェーンを強化し、市場での競争力を高めるべきだと述べました。副首相は、「イノベーションがなければ急速な進歩は難しく、適切な経営がなければ遠くへ行くことは難しく、誠実さがなければ持続可能な発展は難しい」と語り、政府は若手企業が資本、土地、データ、科学技術に容易にアクセスできるよう、制度を完成させ、投資環境を大幅に改善し続けると断言しました。ASEAN経済統合における日本企業の活動を見ても、生産ネットワーク形成の重要性は明らかです。
若手起業家の経済貢献と今後の展望
昨年度、2026年優秀若手起業家賞を受賞した企業の総売上高は4,450億ドン(約267億円)を超え、利益は約960億ドン(約5.76億円)に達しました。これらの企業は国家予算に480億ドン(約2.88億円)以上を納め、約3,726人の雇用を創出しました。特に上位10社の売上高は1,886億ドン(約113.16億円)、利益は373億ドン(約22.38億円)を超え、729人の雇用を生み出しました。これは、株式会社ヨコオの統合報告書に示されるような高い収益性と成長率を示しています。
ベトナム政府がスタートアップエコシステムを重視し、若手起業家を積極的に支援する背景には、経済成長の新たな牽引役としてイノベーションを位置づけている構造的な意図があります。特に、デジタル経済への移行と国際競争力の強化を目指す中で、単なる資金提供に留まらないメンターシップやネットワーク構築の重要性を強調している点は、持続可能な成長を見据えた戦略と言えるでしょう。これは、JICAがベトナムの人材育成戦略に貢献する方向性を示していることとも合致しており、国を挙げての支援体制が強化されていることが伺えます。
在ベトナムの日系企業にとって、この動きは新たなビジネス機会と同時に、競争環境の変化を意味します。ベトナムの若手起業家がデジタル技術やAIを駆使して国際市場に参入する中で、現地での協業やM&Aの可能性も高まるでしょう。しかし、政府が「愛国心や倫理観、社会的責任」を重視するメッセージは、単なる経済的成功だけでなく、企業としての社会貢献も強く求められることを示唆しており、日系企業も同様にローカルコミュニティへの貢献や持続可能なビジネスモデルを意識する必要があるでしょう。


