ベトナムの消費財大手マサン・グループが、ブランド、小売、テクノロジーを統合する「大連結」モデルを掲げ、新たな成長フェーズに突入しました。同社は、ベトナムの消費・小売インフラを近代化し、消費者とサプライチェーン全体に付加価値をもたらす戦略を推進しており、VnExpressがその詳細を報じています。
ベトナム消費市場の巨人マサン、新成長フェーズへ
マサン・グループのグエン・ダン・クアン会長は、2026年年次株主総会で、同社の消費財事業が新たな成長段階に入ったことを発表しました。同グループは、ブランド、小売、テクノロジーの三つの柱からなる「大連結」モデルを推進しており、これによりベトナムの消費・小売インフラの近代化を図り、消費者とサプライチェーン全体に新たな価値を創造することを目指しています。特に、所得水準の向上と中間層の拡大が進むベトナムにおいて、消費者のニーズに直接応える戦略が注目されます。
小売部門ウィンコマースの劇的な回復
この「大連結」モデルの要となるのが、小売部門のウィンコマースです。2020年にヴィンコマースシステムを引き継いだ際、同社は約3,000億ドン(約18億円)の損失を計上していました。しかし、その後の事業再編と効率化により、ウィンコマースは現在、利益を伴う成長段階に移行。グエン・ダン・クアン会長は、今年中にこの3,000億ドンを株主に還元する見込みであると述べ、その回復ぶりを強調しました。これは、ベトナムの小売市場が急速に近代化し、消費者の購買行動が変化していることを示しています。
消費者とサプライチェーンに貢献する「大連結」
マサンが目指すエコシステムは、消費者にとって日常の必需品にかかる費用を約10%削減することです。これは5年前の目標である5%から大幅に引き上げられたもので、ベトナムの1億人の消費者と2,600万世帯がより豊かな生活を送り、将来への投資余剰を生み出すための鍵とされています。また、この「大連結」プラットフォームは、サプライチェーン全体の事業効率を20%最適化することも目指しており、これにより得られた資源は、一般労働者の最低賃金を月額1,000万ドン(約6万円)に引き上げることに充てられる計画です。
成長の鍵を握るミートデリとコールドチェーン整備
マサンが特に成長余地が大きいと見込んでいる分野の一つが、食肉ブランド「ミートデリ」を含む食肉産業です。グエン・ダン・クアン会長によると、ミートデリは現在、市場シェアが約2%、流通カバー率が7%と限定的ですが、その市場規模は150億ドル(約2兆3,000億円)に上るとされ、巨大な潜在力を秘めています。同社は、リテール・スプリームプラットフォームとコールドチェーンシステムの整備を通じて、流通カバー率を90%まで引き上げ、安全で高品質な食肉をベトナム全家庭の食卓に届けることを目標としています。これは、ベトナムにおける冷凍・冷蔵食品の消費増加というトレンドとも合致しており、日系企業にとっても注目すべき動きです。
ベトナム経済発展を牽引するマサンの展望
マサン・グループは、長期的な成長戦略の基盤として、質の高い人材の確保にも注力しています。同社の「大連結」戦略は、単なる企業成長に留まらず、ベトナムの消費市場全体の近代化、生活水準の向上、そして労働者の所得改善にも貢献することを目指しています。ホーチミンやハノイといった大都市圏を中心に、現代的な小売インフラとデジタル技術の融合が進む中で、マサンの取り組みはベトナム経済のさらなる発展を牽引する重要な要素となるでしょう。
マサン・グループの「大連結」戦略は、ベトナムの急速な経済成長と人口動態の変化に深く根差しています。若く、巨大な労働力人口と拡大する中間層は、現代的な消費財や小売サービスへの需要を構造的に高めています。同社の戦略は、伝統的な市場が未だ多く残る中で、ブランド力、広範な小売網、そして技術を統合することで、この断片化された市場を近代化し、消費者の利便性と生活の質を向上させることを狙っています。
この動きは、ベトナムに在住する日本人や日系企業にとっても重要な意味を持ちます。特に、コールドチェーンの整備と高品質な食肉製品の供給拡大は、食の安全性と多様性へのアクセスを向上させるでしょう。一方で、マサンが示すような国内企業の強力な成長は、ベトナム市場における競争の激化を意味します。日系企業は、現地の消費者嗜好を深く理解し、ローカライズされた戦略と強固なサプライチェーンを構築することが、今後の成功の鍵となるでしょう。


