タイ政府は、国営企業に対し人工知能(AI)の導入と研究開発の強化を指示しました。副首相兼財務大臣のエカニティ・ニティタンプラパート氏が国家企業政策委員会(SEPC)の会議でこの方針を打ち出し、業務効率の向上を目指します。この動きは、プラチャチャート・ネットが報じたものです。
バンコク:タイ国営企業改革の3つの柱
タイ政府は、長年にわたり国営企業の改革を進めてきました。特に、プラユット政権以降は経済格差の是正や経済ポテンシャルの向上を目指し、国営企業の効率化が重要な課題とされてきました。エカニティ副首相兼財務大臣は、5月21日に開催された国家企業政策委員会(SEPC)の会議で、国営企業に対し以下の3つの主要政策を指示しました。
1. 財務省を「アクティブな株主」とすること:国営企業の評価結果を積極的に活用し、更なる発展を促します。
2. 研究開発(R&D)の強化:委員会の多くのメンバー、特に有識者委員からR&Dへの注力が強く求められています。JSTのレポートでも指摘されているように、タイは科学技術イノベーション政策を推進しており、R&Dは国の競争力向上に不可欠です。
3. 人工知能(AI)の重視:特にアプリケーションへのAI導入を推進し、業務効率の向上を目指します。
タイ政府、AI導入による効率化と未来展望
エカニティ副首相は、「今日のAI、特にエージェンティックAIの進化は目覚ましいものがあります」と述べ、国家企業政策事務局(SEPO)に対し、国営企業向けにAI開発セミナーを準備するよう指示しました。これにより、各国営企業、例えばエネルギー部門や公共事業部門などのアプリケーションでAIを活用し、業務効率を向上させる狙いです。タイのデジタル経済社会省もAIの倫理ガイドラインの草案を作成するなど、政府全体でAI導入を推進しています。これは、国民のデジタル能力開発や情報格差の解消にも寄与すると期待されています。
タイ経済のデジタル変革と課題
今回のAI導入加速の指示は、タイが直面する社会経済的な課題、特に社会経済制度の改革や地域間格差の是正といった文脈の中で理解されるべきです。国営企業の効率化は、公共サービスの質の向上やコスト削減に繋がり、ひいては国民の生活に直接的な影響を与える可能性があります。タイは1980年代半ばに市場経済改革を本格化させて以来、経済発展を遂げてきましたが、さらなる成長のためにはデジタル技術の活用が不可欠とされています。国営企業がAIを活用することで、例えば電力供給の最適化や交通インフラの管理効率化など、多岐にわたる分野での改善が期待されます。
今回のタイ政府による国営企業へのAI導入加速指示は、タイが長年抱える国営企業の効率性と透明性に関する構造的な課題への対応と見ることができます。タイの国営企業は、歴史的に経済発展の推進力となってきましたが、同時に非効率性や政治的介入といった批判に晒されることも少なくありませんでした。AI導入は、これらの企業がガバナンスを強化し、市場経済における競争力を高めるための不可欠なステップであり、政府が「アクティブな株主」として改革を推進する強い意志を示しています。
この動きは、タイに在住する日本人や日系企業にも間接的な影響を及ぼす可能性があります。国営企業が提供する公共サービス(電力、交通、通信など)の効率化は、生活コストの安定やインフラの利便性向上に繋がり、ビジネス環境の改善にも寄与するでしょう。特に、デジタル技術を活用したサービス展開が進めば、日系企業が新たなビジネスチャンスを見出す可能性も高まります。タイ政府のデジタル化推進は、中長期的な視点で見ると、より予測可能で効率的な社会基盤の構築に繋がると期待されます。


