タイ農業・協同組合省が、国内漁業の持続可能な発展と漁業者支援を目的とした4つの主要政策を発表しました。ワッチャラポン・カオカム農業・協同組合省副大臣は、特に燃料コストに苦しむ漁業者への迅速な支援を指示しており、The Thaigerが報じました。
タイ漁業の現状と新政策の背景
2026年5月22日、水産局にてワッチャラポン・カオカム農業・協同組合省副大臣が、タイの漁業部門を国の主要経済基盤の一つとして再興するための新たな政策を発表しました。タイの水産業は、近年、海洋環境の変化、資源の乱獲、漁業就業者の減少と高齢化、そして食用魚介類消費量の減少といった課題に直面しています。特に燃料価格の高騰は、漁業者の経営を圧迫する喫緊の課題となっており、政府の迅速な対応が求められています。
4つの柱で持続可能な漁業を目指す
ワッチャラポン副大臣が発表した政策は、以下の4つの主要な柱に基づいています。
- 生態系管理(Biodiversity & Balance):特に外来魚であるブラックチンティラピアの蔓延は緊急の課題とされ、日次での状況報告と蔓延地域の限定、そして有効利用が指示されました。また、「水に魚」という概念のもと、自然水域の回復を推進します。
- 生活の質の向上と公正な法律(Life and Local Empowerment & Legal Justification):沿岸漁業者や商業漁業者の燃料コスト問題の解決に重点を置き、特に「グリーンオイル」と呼ばれる燃料の管理を改善します。また、現状に即した漁業法規制の見直しも進められます。
- スマート農業による養殖の向上(Upgrading Technology):「市場主導、イノベーション強化、収入増」を指針とし、スマート漁業(Smart Fisheries)への移行を促進します。早期警戒システムの開発やAI、IoT技術の効率的な活用が計画されています。
- トレーサビリティの厳格化と輸出基準(E-Traceability & Export Standard):製品のトレーサビリティを強化し、世界市場での信頼性を高めます。これにより、タイの優れた水産物(Product Champion)をプレミアム市場へ展開することを目指します。
喫緊の課題「燃料コスト」への迅速な対応
副大臣は、水産局に対し、予算と明確な成果指標を盛り込んだ行動計画を2週間以内に策定するよう指示しました。特に、漁業者の福利厚生と、全国の漁業関係公務員の業務環境の改善が、持続可能な漁業産業の強化に不可欠であると強調しました。緊急政策としては、高騰する燃料費に苦しむ漁業者への支援が最優先事項とされ、特に「グリーンオイル」の管理問題が挙げられています。この問題は長年にわたり漁業者に影響を与えてきたため、水産局は具体的な支援策を速やかに策定するよう命じられました。
スマート漁業と国際市場への挑戦
市民の課題解決に直結する事項は7日以内に結果を出し、進捗を直接報告するよう指示されました。また、将来の状況に対応するための長期的な計画と政策については、10日以内に詳細を提出するよう求められています。これは、タイ漁業が直面する課題に対し、迅速かつ具体的な解決策を講じるという政府の強い意志を示すものです。持続可能な漁業への転換は、海洋環境保護や違法・無報告・無規制(IUU)漁業の排除にも繋がり、国際的なサステナビリティ目標達成にも貢献すると期待されています。
今回のタイ政府の漁業政策は、国内水産業が抱える構造的な課題、特に資源管理の不均衡と漁業従事者の生活安定に焦点を当てている点で注目されます。海洋環境の変化や資源の乱獲は世界的な問題であり、タイも例外ではありません。ブラックチンティラピアのような外来種問題への緊急対応は、生態系バランスを回復させる上で不可欠であり、漁業資源の持続可能性を確保するための第一歩と言えるでしょう。また、スマート漁業への移行は、生産性向上だけでなく、環境負荷の低減にも繋がるため、長期的な視点で見ても重要な戦略です。
在タイ日本人にとっても、この政策は間接的に影響を与える可能性があります。特に水産物のトレーサビリティ強化と輸出基準の向上は、タイ産水産物の品質と安全性の信頼性を高め、日本市場への輸出拡大に繋がるかもしれません。また、持続可能な漁業への取り組みは、タイの観光業においても「エコツーリズム」や「サステナブルツーリズム」といった新しい価値創造の機会となる可能性を秘めています。観光客が訪れる沿岸地域での漁業コミュニティの活性化は、地域経済にも良い影響をもたらすでしょう。


