タイ商業省による米国産遺伝子組み換え(GMO)トウモロコシ100万トン輸入の覚書(MOU)署名に対し、ピチット県の農家が強い落胆と懸念を表明しています。これは国内のトウモロコシ価格にさらなる下落をもたらすとの見方が強く、タイ全国農業評議会も再検討を求めていました。この動きは、カオソッド紙が報じたもので、タイの農業政策における大きな議論を呼んでいます。
ピチット県農家、GMOトウモロコシ輸入に強い懸念
2026年5月22日、タイ商業大臣のシュパジー・スタムパン氏が米国からの遺伝子組み換えトウモロコシ100万トン輸入に関するMOUに署名したことを受け、ピチット県農業評議会議長のタワッチャイ・タッティエン氏は深い懸念を示しました。同氏は、今回の輸入によって国内のトウモロコシ価格がさらに低迷することを危惧しています。
これまでタイ商業省は、国内農家からトウモロコシを買い取る政策を実施してきましたが、今回の大量輸入は、その努力を無にする可能性が高いと指摘されています。
国内市場への影響と価格下落の懸念
タワッチャイ議長は、米国からのGMOトウモロコシの大量輸入が、最も深刻な影響をもたらすのは国内トウモロコシ市場であると強調しました。タイでは、キャッサバやメイズ(トウモロコシ)などの商品作物の普及が森林の農地転用の一因となっており、農家の生活はトウモロコシ価格に大きく依存しています。今回の輸入決定は、国内農家が直面する経済的困難をさらに悪化させる恐れがあります。
農林水産省の資料によると、遺伝子組み換え食品は必ずしも社会的に円滑に受容されているとは言いがたく、その安全性評価、表示規制、貿易問題に関して、生産者、消費者、政策当局の間で常に議論が続いています。
農業評議会の反対と政府の姿勢
タイ全国農業評議会は、今回のMOU署名に先立ち、トウモロコシ飼料政策管理委員会に対し、この輸入計画の再検討を求める代表者を派遣し、積極的に反対意見を表明していました。しかし、タワッチャイ議長によると、政府は農家の声に全く耳を傾けなかったとのことです。
議長は、農家が反対しているにもかかわらず、米国とのGMOトウモロコシ輸入MOUが署名されたことに失望を表明し、政府に対し、農家の意見にもっと耳を傾けるよう強く求めています。
タイ農業政策とGMO作物の背景
タイでは、米国との自由貿易協定(FTA)交渉開始に伴い、遺伝子組み換え(GM)作物の屋外栽培と商業化を認める政策への転換が議論されてきました。これは、農業バイオテクノロジー、特にGM技術が、東アジアにおける農産物・食料貿易に大きな影響を与える可能性があるためです。
しかし、食料危機の原因や、米国の貿易政策が穀物企業の支配を強めることへの懸念も存在します。タイ政府は、国民の健康と国内農業の保護という二つの側面から、慎重なバランスを模索する必要に迫られています。
今回の米国産GMOトウモロコシ大量輸入の決定は、タイの農業が抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。国内の農家が生産したトウモロコシの価格が下落し、生計に影響を及ぼす可能性が高いにもかかわらず、政府が農家の意見を十分に聞かずにMOUに署名したことは、政策決定プロセスにおける透明性と農民の代表性の課題を示唆しています。
タイは長年、首都バンコクを中心とする大都市圏と、地方の農村部との間に地域格差が存在しており、農村の貧困や公共サービス不足も問題視されています。今回の決定は、食料安全保障と国内産業保護のバランスをどう取るかという、タイ政府にとって喫緊の課題を突きつけています。


