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バンコク含むASEANクイックコマース、価格競争が鍵

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バンコクを含むASEAN地域のクイックコマース市場は、2025年までに73億ドル(約3650億円)規模に達する見込みです。しかし、その成長の鍵は配送速度ではなく、実店舗との競争に打ち勝つ「価格競争力」にあると、シンガポールのコンサルティング会社Momentum Worksの報告書が指摘しています。

ASEANクイックコマース市場の現状と成長予測

シンガポールを拠点とするビジネスコンサルティング会社Momentum Worksが発表した詳細な分析レポート「Quick Commerce in Southeast Asia 2026」によると、東南アジア地域のクイックコマース(オンデマンド配送)市場の流通総額(GMV)は、2025年には73億ドル(約3650億円)に達すると予測されています。この数字は、ASEAN地域のeコマース市場全体の4.6%を占めるものの、小売市場全体の1.09兆ドル(約545兆円)と比較すると1%未満に過ぎません。

ASEAN独自の成長モデル:既存小売網の「レイヤリング」

ASEANにおけるクイックコマースの成長経路は、中国やインドとは大きく異なります。インドがダークストア(閉鎖型倉庫)システムを導入して従来の小売の制約を克服し、中国がフードデリバリーのドライバー基盤をクイックコマースに活用したのに対し、ASEAN市場は既存の密集した小売店ネットワークにオンデマンド配送システムを「レイヤリング」(重ね合わせる)することで成長しています。これは、オフライン店舗やO2O(オンライン・ツー・オフライン)ネットワークを置き換えるのではなく、活用する戦略です。

食料品から多様な商品カテゴリへ拡大

初期のクイックコマースは、リピート購入率が高い食料品が主な牽引役でした。しかし、現在、ASEAN全域でのオンライン食料品購入率は4.2%と依然低水準です。このため、各プラットフォームは戦略を転換し、日用品、パーソナルケア用品、医薬品など、他の商品カテゴリへの本格的な拡大を進めています。さらに、クイックコマースは主要eコマースプラットフォームにとって「新たな戦場」となりつつあり、現在ではASEANのeコマース売上全体の3.4%がクイックコマースネットワークを通じて配送されており、次の競争フェーズへの突入を示唆しています。

「節約」が「迅速性」を上回る重要性

報告書は、現在の成長を妨げる主な要因が供給側(ドライバー、店舗、プラットフォームの数)ではなく、「消費者の需要と行動」にあると指摘しています。このビジネスの主要なセールスポイントは「迅速性」ですが、価格に敏感なASEAN地域の大部分の消費者を惹きつけるためには、「節約」が不可欠です。プラットフォームは、実店舗での購入と同等かそれに近い価格設定を実現する必要があり、そのためには十分な資金力が必要です。これが実現できなければ、クイックコマースは引き続きプレミアムなニッチサービスに限定されるでしょう。

各国で異なる市場戦略:タイの特殊性

報告書は最後に、ASEAN市場には単一の成功モデルは存在しないと結論付けています。インドネシアでの成長がeコマースプラットフォームによって推進される傾向にある一方で、アルファマートやインドマートといった大手ミニマートチェーンは、自社でのサービス拡大にあまり積極的ではありません。一方、タイでは、主要なコンビニエンスストア市場が巨大企業によって独占されているため、ニッチな専門プレイヤーに機会が生まれています。ASEAN全域で単一の戦略を適用しようとする事業者は、期待外れの結果に直面する可能性があります。

タイを含むASEANのクイックコマース市場が「迅速性」よりも「節約」を重視する方向へシフトしていることは、在住日本人や日系企業にとって重要な示唆を与えます。タイの消費者は価格に非常に敏感であり、この傾向は金融包摂が進む中でミレニアル世代やギグワーカー層にも顕著です。特にバンコクのような都市部では、大手コンビニエンスストアが市場を寡占しているため、既存のインフラを活用しつつ、いかにコスト効率良くサービスを提供できるかが、新規参入や事業拡大の鍵となるでしょう。

この背景には、ASEAN各国の経済発展段階や消費者の購買力が多様であることが挙げられます。単に速く届けるだけでなく、いかに手頃な価格で商品を提供できるかが、タイの労働者・消費者保護評議会が示すような消費者の権利保護意識の高まりとも連動し、市場の受け入れに直結します。物流コストやギグワーカーへの報酬とのバランスを取りながら、消費者にとって魅力的な価格設定を実現できる企業が、この競争の激しい市場で成功を収めることができるでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
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