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メコンデルタのドリアン、カドミウム汚染で中国輸出に試練【ベトナム】

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ベトナム産ドリアンがカドミウム汚染により中国市場で返品される問題が深刻化し、価格が大幅に下落しています。主要輸出先である中国がカドミウム含有量に厳しい基準を設けていることが背景にあり、多くの農家が損失を被っています。VnExpressが報じたところによると、この状況は持続可能な農業への転換を促すきっかけとなっています。

ドリアン価格暴落と輸出停止の背景

約1ヶ月前から、ベトナム産ドリアンの価格は急速に下落しています。特に人気のリック種は、農園での買い取り価格が1kgあたり2万〜3万ドン(約120〜180円)と、ここ数年で最も低い水準にあります。これはテト(旧正月)期間中の約3分の1の価格です。また、モントーン種も1kgあたり7万〜8万ドン(約420〜480円)にまで値下がりしており、多くの農家が大きな損失を抱えている状況です。

この価格暴落の主な原因は、主要な消費市場である中国への輸出貨物が、カドミウム汚染を理由に返品されていることにあります。中国は現在、全ての輸出ロットに対して100%の検査を義務付け、カドミウム含有量を0.05 mg/kg以下に厳しく管理しています。さらに、タイ産ドリアンとの競争激化も、ベトナム産ドリアンの市場価格に圧力をかけています。

カドミウム汚染の原因と農業への影響

カドミウムは、火山噴火や鉱物化、水源といった自然由来の要因や、冶金、電池製造、鉱物採掘、染色、金属めっきなどの工業生産活動から発生する重金属です。これらの活動から生じる廃棄物や廃水が適切に処理されない場合、カドミウムは環境中に拡散し、土壌や水源に浸透する可能性があります。

さらに、カドミウムは、リン酸肥料などの無機肥料、堆肥、有機肥料製造からの汚泥といった農業資材にも含まれることがあります。ベトナムの農業・食品分野では、食品検査能力の強化が課題の一つとされており、今回の件はその重要性を改めて浮き彫りにしています。

土壌汚染の実態と科学的分析

南部果樹研究所(ソフリ)のグエン・ティ・ゴック・チュック博士によると、本来、農地のカドミウム含有量はわずかです。しかし、化学肥料の長期的な乱用、過度な集約栽培による土壌の疲弊、そして工業廃棄物管理の甘さが重なり、カドミウムの蓄積が進行し、農業生産に深刻な影響を与えています。

ソフリが2025年に実施した調査では、ドリアン農園の土壌サンプル63件のうち、約60%が中国の基準である0.05 mg/kgを超えるカドミウムを含んでいました。ベトナムの現行基準(4 mg/kg)よりは低いものの、中国市場への輸出には大きな障害となります。また、検査されたドリアン果肉300件以上のうち、約5%が中国の食品安全基準0.05 mg/kgを超過していることが判明しました。

「自然に優しい」カドミウム対策

チュック博士は、カドミウムの管理はそれほど難しくなく、生物学的で自然に優しい解決策によって段階的に対処できると指摘しています。具体的には、石灰や有機肥料を使用して土壌のpH値を上げることが、植物によるカドミウム吸収を抑制するのに役立ちます。

また、特定の微生物製剤は、カドミウムを固定、吸収、または毒性の低い、あるいは無毒な形態に変換する能力を持っています。さらに、いくつかの研究では、土壌に適切なバイオ炭(生物炭)を補給することで、カドミウムを最大100年間という非常に長い期間、土壌中に保持できる可能性が示されています。これらの持続可能な農業技術は、ベトナムの豊かな自然を守りながら高品質な農産物を生産するための鍵となるでしょう。

土壌解毒のための植物活用

土壌の解毒には、カドミウムを強く吸収する植物を混植する方法が有効です。例えば、アブラナ、ミント、アマランサス、ホオズキ、ホテイアオイ、ヨウサイ、ミズワラビ、マンネングサなどが挙げられます。これらの植物は、収穫後、適切に回収・焼却し、灰を処理することで、カドミウムが環境中に再拡散するのを防ぐ必要があります。

ソフリの初期研究結果によると、適切な施肥とドリアンの根元周辺でのアブラナ栽培、そして生物製剤の併用が、ドリアン果肉中のカドミウム含有量を削減するのに役立つことが示されています。メコンデルタの農村風景に、これらの植物がドリアンと共に育つ様子は、未来の持続可能な農業モデルを示唆しています。

政府と農家への提言

ソフリのヴォー・フー・トアイ所長は、地方自治体と農業部門に対し、カドミウム汚染地域のマップを作成し、市場で流通する肥料中の重金属含有量を厳しく管理するよう提言しています。同時に、農園でのドリアンの品質検査を強化する必要性も訴えています。

農業栽培・植物保護局によると、ベトナム全国のドリアン栽培面積は2025年までに15万ヘクタールを超え、2030年までの計画の2倍に達しています。この急速な拡大は、品質管理の徹底と持続可能な農業実践の必要性をさらに高めています。ベトナム政府と農業関係者には、輸出市場の信頼回復と農家の保護に向けた迅速な対応が求められます。

今回のドリアンにおけるカドミウム汚染問題は、ベトナムの急速な経済成長と工業化が農業環境に与える構造的な影響を浮き彫りにしています。特に、肥料の輸入依存度が高く、その品質管理が十分でない現状は、土壌汚染のリスクを増大させています。主要な輸出先である中国が厳しい食品安全基準を設けることは、ベトナム農業が国際市場で競争力を維持するために、避けて通れない課題となっています。

ドリアンはベトナムを代表するフルーツの一つであり、その品質問題は在住日本人や観光客にとっても無関係ではありません。食の安全への意識が高まる中で、今回のニュースはベトナム産農産物全体の信頼性に関わる重要なシグナルと捉えることができます。持続可能な農業への転換と厳格な品質管理は、ベトナムの食文化を守り、国際的な評価を高める上で不可欠な要素となるでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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